弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

厚生労働省の研究班が無痛分娩の安全対策をまとめ公表(報道)

TBS「無痛分娩」安全に行うには? 増加する一方で事故も・・・」(2018年3月29日)は,次のとおり報じました.

 「出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩について、厚生労働省の研究班が安全対策をまとめ、公表しました。

 静岡県内の産科クリニック。行われていたのは帝王切開の手術です。万が一の容態急変に備え、執刀医だけでなく、麻酔担当など2人の医師が立ち会いますが、2人は、このクリニックの医師ではなく、別のクリニックからの応援です。日本は欧米に比べ小規模な診療所での出産が多く、現場ではいま、こうした連携が求められています。

 「静岡県は1人で開業が7~8割。肝心のところだけ2人になれる工夫で今のような(連携を)やっている」(前田産科婦人科医院 前田津紀夫医師)

 特に、最近ニーズが高まっている「無痛分娩」を行うために、医師の連携が重要だといいます。

 「無痛分娩」は、背骨の神経の近くに麻酔薬を注入し、痛みを和らげる方法で、出産時の疲労が少なく回復が早いとして、希望する人が増えています。その一方で、うまく息張れず、分娩が長時間に及ぶこともあり、容態の急変に備えた体制が必要だとされています。しかし、実際には医師が少ない小規模な診療所で行われているケースが半数以上だといいます。

 「(無痛分娩の)麻酔中に医師が離席してしまった。(無痛分娩を)やっていいクリニックなのか」(無痛分娩で妻と子を亡くした男性)

 無痛分娩で脳にダメージが残り亡くなった女性と子どもの写真です。異変が起きたとき、医師は外来診療を行っていて対応が遅れたとみられています。こうした事故が去年、相次いで明らかになりました。

 「(リスクに)対処できる体制を敷いてもらうことが必要」(無痛分娩で妻と子を亡くした男性)

 そして、厚労省の研究班が29日、無痛分娩についての安全対策を初めてまとめ、提言という形で公表しました。無痛分娩を実施する医師は麻酔の経験が100例以上あること、医療機関は麻酔管理者の配置など十分な人員体制を敷くことなどが示されました。しかし、対策はあくまで任意で、義務づけることまでは求めませんでした。

 「きょうこの提言を何とかまとめたが、まだまだ十分ではない。きょうはようやく第一歩を踏み出そうとしているという認識」(研究代表者・北里大学病院 海野信也院長)

 遺族などから実効性への疑問の声が高まるとみられますが、今後は関係する学会で議論が行われる予定です。



NHK「無痛分べん ”麻酔後30分は医師が確認を“ 厚労省研究班」(2018年3月29日)は,次のとおり報じました.

「麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分べん」について、厚生労働省の研究班は安全に実施するための手順や管理体制などを示した提言をまとめました。

麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分べん」については、重篤な事故が起きたという報道が相次いだ一方で、麻酔を投与したあとの管理手順が定められていないなどの課題が指摘されてきました。

29日、厚生労働省の研究班は提言を公表し、麻酔による中毒症状などへの対応が遅れないよう、麻酔の投与から30分間は担当医師が妊婦の呼吸や脈拍などを記録し状態を確認することや、産後3時間が経過するまでは、医師が5分程度で駆けつけられる体制をとるよう求めています。

また、麻酔を担当する医師は2年に1回程度、麻酔についての研修を受け、医療機関のホームページなどで研修の受講歴や無痛分べんの実施件数を公開することも求めています。

この提言は関連する学会などを通じて全国の医療機関に周知されることになっています。

一方、この研究班では無痛分べんによる事故の発生割合を調べようとしましたが、アンケート調査の回答率が低く十分な調査ができなかったとしたほか、無痛分べんを実施する医師に新たな認定資格の取得を義務づける案も検討しましたが、すでに実施している医師に参加を促すのは難しいなどとして見送られました。

研究班の代表で北里大学病院の海野信也病院長は「無痛分べんは急速に普及しているので、今回の提言を第一歩として引き続き安全体制の構築に努めたい」と話しています。」


研究班が提言をまとめたことは第一歩として評価できます.
しかし,その内容をみると歯がゆい限りです.
医師が少ない小規模な診療所で半数以上の無痛分娩行われているという現状を前提に,それらの小規模な診療所に可能な範囲で対策を検討するのでは限界があります.こと無痛分娩に関しては,国際的にもまれな日本の現状を改める必要があると思います.国際標準の実効的な安全策の実施に向けて,今後の各学会等の取り組みに期待し,注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-03-29 17:30 | 無痛分娩事故