弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「第8回産科医療補償制度 再発防止に関する報告書-産科医療の質の向上に向けて」

公益財団法人日本医療機能評価機構は,2018年3月,「第8回産科医療補償制度 再発防止に関する報告書-産科医療の質の向上に向けて」を発表しました.

今回のテーーマに沿った分析は,「遷延分娩について」と「胎児心拍数陣痛図の判読について」です.

遷延分娩についても産科医療関係者に対する提言は,次のとおりです.
1)分娩進行が遅延していると判断した場合、または分娩進行が遅延することが予測される場合は、以下に留意し分娩管理を行う。
・分娩経過中の胎児心拍数陣痛図における異常波形の有無を確認する。異常波形の種類や持続時間、異常波形出現後に胎児well-beingが健常であると判断される波形となったか否かにかかわらず、異常波形出現からの時間を把握する。加えて、分娩進行の遅延の原因(分娩の3要素の異常、胎児発育状態、母体合併症等)の有無と胎児心拍数波形の変化、分娩の進行状態等を総合的に判断し、適切な医療介入(子宮収縮薬による分娩促進など)、経腟分娩継続の可否を検討しながら管理する。
・パルトグラムは分娩経過中の観察や処置を行った時点で記載し、特に分娩第I期活動期(子宮口開大4cm)以降は、分娩進行が遅延していないかをパルトグラムを確認しながら管理する。遅延していると判断した場合は、原因検索や適切な医療介入の検討に活用する。
・胎児心拍数および陣痛の観察は 「産婦人科診療ガイドライン-産科編2017」 に則して行い、分娩監視装置装着中は胎児心拍数陣痛図を10分区画ごとに判読し、胎児心拍数波形分類に基づき対応と処置を行う。
・子宮収縮薬による分娩促進が必要と判断した場合は、「産婦人科診療ガイドライン-産科編2017」に則して使用する。子宮収縮薬投与中は分娩進行と子宮収縮、胎児心拍数陣痛図の判読所見から、子宮収縮薬の増量・再投与または減量・中止を検討する。
2)遷延分娩または分娩停止となり、重症の新生児仮死が認められた場合は、子宮内感染の可能性があるため、胎盤病理組織学検査の実施を推奨する。
3)分娩経過中に観察した事項、および実施した処置等に関しては、 診療録に正確に記載する。


胎児心拍数陣痛図の判読についてmの産科医療関係者に対する提言,次のとおりです.
1)すべての産科医療関係者は、胎児心拍数陣痛図の判読能力を高めるよう各施設における院内の勉強会や院外の講習会へ参加する。特に遅発一過性徐脈と変動一過性徐脈の鑑別、遅発一過性徐脈の判読、遅発一過性徐脈と早発一過性徐脈の鑑別、基線細変動減少・消失の判読について、正しく判読できるように習熟する。
2)胎児心拍数の波形パターン出現の生理学的な意味を理解し、胎児心拍数陣痛図から胎児状態を推測することができるように習熟する。
3)各トランスデューサーを正しく装着し、正確に胎児心拍数と子宮収縮を計測・記録する。正確に計測・記録されない場合は、原因検索を行い、トランスデューサーの固定位置を確認し、再装着する。
4)分娩監視装置の紙送り速度については、1cm/分または2cm/分で記録すると3cm/分で記録した場合に比し、基線細変動の評価や早発・遅発・変動一過性徐脈の鑑別が難しくなる。基線細変動の評価や一過性徐脈の鑑別に有利であるため、胎児心拍数陣痛図を3cm/分に統一する。
5)胎児心拍数陣痛図の評価は、「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」に則して行い、評価の結果は正常・異常にかかわらず判読所見を診療録に記載する



谷直樹

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by medical-law | 2018-04-06 23:43 | 医療事故・医療裁判