弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

兵庫県立がんセンター,放射線科医が子宮癌手術を受けた女性の肺への転移を指摘したにもかからず,主治医が見逃し(報道)

産経新聞「がん転移見落とし3年放置 兵庫県立病院のCT検査、放射線医カルテで指摘も主治医確認怠る」(2018年6月22日)は,次のとおり報じました.

「兵庫県は22日、県立がんセンター(明石市)で、子宮頸がん手術を受けた40代女性患者のコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断で肺への転移を見落とし、今年4月まで3年間放置していたと発表した。肝臓への転移も見つかり、現在は通院治療している。

 県によると、女性は2009年に子宮を全摘出し、15年4月にCT検査を受けた。放射線科医が「肺に転移性の腫瘍の疑いがある」とカルテ上で指摘していたが、男性主治医が確認を怠った。今年4月のCT検査で、腫瘍が大きくなり数も増加していることが分かり、過去の画像を確認して医療ミスが判明した。」



報道の件は,私が担当したものではありません.
私が今関与している癌の見落とし事件は10件ちかくあり,そのうち伝達ミスも結構の数があります。
主治医が検査報告書を読まなかったことによる癌の見落とし事故は,過失が明らかなため訴訟になることは少なく,病院が公表しないと報道されず,目立たなかっただけで,これまでも件数としては少なくなかったように思います.

癌見落としの実効的な再発防止策は,検査報告書を患者に渡すようにすることです.特段症状がなく癌検診を受けた人には結果が通知されるのに,何らかの症状があって病院を受診し疾患の疑いがあって検査を受けた人には検査結果が通知されないのは,不合理です.
患者に精密検査が必要という検査報告書が渡されたら,もし主治医が報告書を読まず精査を指示しない場合には,患者から主治医に質問するでしょうから,主治医が読み落としていても見落とし事故はほぼ発生しないでしょう.また,検査報告書が患者に渡ることにより,医療者が緊張感,プレッシャーを感じ,より慎重に読影するようになり,読影ミスも減ると思います.医療現場には検査報告書を患者に渡すことについて未だ抵抗感があるようですが,癌を見落とされた患者のやるせない気持ちを考えると,検査報告書を患者に渡すことを定着するべきだと思います.
少なくても,癌の見落とし事故の発生件数,内容についての全国調査は必要と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-06-22 16:54 | 医療事故・医療裁判