平成29年の医事関係訴訟,提訴は857件,審理期間は24.2月,認容率(患者側勝訴率)は20.5%,和解54.6%
裁判所の集計によると,平成29年の医事関係訴訟(新受)は857件でした.前年の878件より21件減少ですが,前年が前々年より52件増加でしたから,これが平均的な数字と思います.
医療ADRなど裁判外の紛争解決手段が充実してきたにもかかわらず,平成29年に提訴された医事関係訴訟が857件もあったということは,(1)医療過誤の疑いのあるケースが表面化することが増えてきたためと(2)弁護士へのアクセスが容易になってきているためではないか,と思います.
2 1審平均審理期間24.2月
1審の平均審理期間は24.2月(速報値)です.
平成25年以降,審理期間は2年を切っていましたが,2年をわずかに超えました.
平均は2年程度と考えてよいでしょう.
3 認容率(患者側勝訴率)20.5%
平成29年の地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率(原告=患者側が勝訴した率)は,20.5%と著しく低率です.
平成28年が17.6%ですから,一応回復したとは言えますが,通常訴訟の認容率84.9%(証拠調べを実施した場合の認容率61.4%)と比較すると,著しく低率です.
医療事件に不慣れな裁判官にとっては過失・因果関係が立証されていないと判断するほうが容易であることも影響している可能性も考えられますし,高裁での患者側勝訴の逆転判決の報道もみられることから,地裁裁判官の力量不足による可能性も考えられますが,何よりも患者側弁護士の準備不足,努力不足が大きいのではないか,と思います。
4 判決は32.5%,和解は54.6%
平成29年終了事件のうち,判決は32.5%,和解は54.6%でした.
和解内容は,判決以上に担当弁護士の力量を反映します.原告側(患者側),被告側(医療側)双方に経験のある弁護士がつくと,先が見えるので,和解で終わることが多いように思います.
谷直樹
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