弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

インフォームドコンセントの意味

インフォームドコンセントについて,未だに臨床医療の実践の中では正しく理解されていないことがあるように思います.

医療行為の最終的判断主体は患者です.つまり,患者自身の価値判断により医療行為が行われるのです.インフォームドコンセントはそのために必要不可欠です.

医療者は,患者に病態,診断についての情報,選択可能な検査,治療の情報,さらにその治療の見通しについての情報を提供します.
患者は,専門的情報を与えられただけで,ただちにその専門的な情報を理解し判断することができませんので,平易な言葉で情報を提供することが必要ですし,情報についての解説も必要です.一方的な情報提供ではなく,患者と医師とが十分コミュニケ-ションをとった情報提供が必要とされます.
治療方法(メニュー)を提示し,お好きなものをお選び下さい,でも選択できる患者もいますが,そうではない患者も多数います.利害得失を示すことが求められています.
そして,医療者には,提供した情報を患者が正確に理解したことを確認することも求められています.
さらに,「情報提供」と「判断」は密接な関係にありますので,医療者は,患者の判断の過程にも関与します.医療行為の最終的判断主体が患者であることは,医療者が判断の過程に関与することを否定するものではありません.「最終的」という言葉は,医療者も自身の判断を示すことを当然の前提としています。医療者と患者が意見を交わし,情報と判断を共有することになります.
インフォームドコンセントは「説明と同意」ではありません.

木村理人氏は,「人間が、専門家と非専門家とを問わず、平等な関係に立ち、相互に持つ情報と決断と方策を共有することが、バイオエシックスの公共政策づくりとして極めて重要なこととなる」と述べています.

また,インフォームドコンセントは単なる手続きと誤解されがちですが,インフォームドコンセントによって悪い結果が起きることを防止できる場合も少なくありません.一般に「療養指導義務としての説明義務」(医師法23条)が認められています.最高裁平成7年5月30日判決は,退院に際し「黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務」を認め,「退院時における被上告人の適切な説明、指導がなかったことが上告人A2らの認識、判断を誤らせ、結果として受診の時期を遅らせて交換輸血の時機を失わせたものというべきである。」と認定しています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 11:01 | 医療