弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

公益財団法人日本医療機能評価機構,医療事故情報収集等事業第55回報告書公表

公益財団法人日本医療機能評価機構は,平成30年12月,医療事故情報収集等事業第55回報告書を公表しました.
「再発・類似事例の分析」において,「病理診断報告書の確認忘れ」(医療安全情報No.71)と「口頭指示の解釈間違い」(医療安全情報No.102)をとりあげ,それぞれ次のとおりまとめています.

「本報告書では、「病理診断報告書の確認忘れ」(医療安全情報No. 71)について、医療安全情報No. 71の集計期間後の2012年9月以降に報告された再発・類似事例を集計した。さらに、そのうち最も多かった上部消化管内視鏡検査の生検組織診断の事例26件について分析を行った。
各診療科の主治医が内視鏡検査担当医に依頼して上部消化管内視鏡検査が行われ、さらに内視鏡検査担当医が病理医に依頼して病理診断が行われる複雑な流れの中で、病理診断報告書が確認されず長期間が経過した事例が報告されていた。また、病理診断報告書が作成されたことや一定期間未読であることを知らせるシステムがある医療機関においても確認忘れの事例が発生していた。
病理診断は患者の治療方針を決定する上で重要な検査であり、病理診断の結果を、いつ、誰が患者に説明するのかを明確にして、病理診断報告書の内容を確実に確認することが必要である。そのためには、医療機関において「内視鏡検査~病理検査~病理診断報告書の確認~患者への説明」の流れを整理し、業務工程を確立することが重要である。また、病理診断報告書の作成や未確認を知らせるシステムを活用する場合は、通知先を適切に設定し、漏れがないように運用することが望まれる。」

「本報告書では、「口頭指示の解釈間違い」(医療安全情報 No. 102)の再発・類似事例8件を分析した。事例の概要では、薬剤が5件と多かった。また、情報を伝える側が指示した内容と、情報を受け取る側が間違って解釈した内容と誤って実施した内容を整理して示し、主な事例や背景・要因、医療機関の改善策をまとめた。
口頭でのやり取りはできる限り行わないとしている医療機関もあるが、緊急時など状況によっては口頭による指示や依頼が発生する可能性がある。報告された事例の中にも、指示した医師が清潔野で処置をしていた事例があった。しかし、口頭で指示や依頼をする場合、情報を簡便に伝えようとした結果、伝えるべき内容が不足してしまうことがある。また、情報を受け取る側も、周囲の環境や状況によっては聞き取りにくい、指示や依頼を視覚で確認できないなどの要因から、相手が意図した内容とは異なった解釈をしてしまう可能性がある。
情報を伝える側は正確に伝わる言葉を選択することや、情報を受け取る側は受け取った内容の解釈を復唱して、双方の意思疎通ができているか確認する必要がある。また、可能な限り、情報を伝える側は口頭での指示や依頼だけでなく指示を入力したり、情報を受け取る側はメモに記載したりするなど、記憶に頼らない工夫をすることが必要である。」


谷直樹

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by medical-law | 2019-01-07 00:14 | 医療事故・医療裁判