弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

病理組織検査結果が入れ替わり間違った検査結果を基に医療行為が行われた医療事故660万円で和解(報道)

一宮市立市民病院は,平成31年2月19日,「医療過誤に対する損害賠償金の支払いにについて」を発表しました.
市内在住男性患者(当時63歳)に660万円を支払うことで合意したとのことです.

概要は以下のとおりです.

「相手方は、平成28年8月31日、一宮市立市民病院で胃内視鏡検査を行い、過去に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した幽門前部小弯瘢痕部と近傍の胃角部前壁びらん部の組織を採取し病理組織検査を実施したところ、瘢痕部からがん細胞が発見され、胃がんの再発と診断されました。再発部位に内視鏡的な手術はできないため同年12月21日に外科的な幽門側胃切除術が実施されました。同年12月27日、切除後の検体の病理組織検査をしたところ、胃内視鏡時にがん細胞が見つかった部位に悪性所見はなく、悪性所見のなかった部位からがん細胞が見つかりました。このことにより同年8月31日の病理組織検査結果が入れ替わった可能性が極めて高いことが判明し、間違った検査結果を基に医療行為が行われた医療事故が発覚しました。過去に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した部位には同じ手技ができないために外科的手術となりましたが、検体の入れ替わりがなければ体への負担がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術の適応になった可能性が高く、診療契約上の義務違反に当たるとして、一宮市に対して、損害賠償を求められたため、相手方と一宮市との間で協議を重ねた結果、損害賠償の額の合意に至ったものでございます。」

上記は私が担当した事件ではありません.

病理組織検査結果の入れ替わり,癌ではない部位を切除し,癌である部位を切除されず,後に,癌のある部位に外科的な切除術が実施された事案です.

病理組織検査結果の入れ替わりについて過失(注意義務違反)があるのは明らかです.
医療過誤に基づく損害賠償は,過失(注意義務違反)だけででは成立しません.損害と因果関係が問題になります.体への負担がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術を行えなかったことなどが「損害」でそれとの因果関係があると判断し,合意に至ったようです.損害算定が難しいので,この660万円の和解は同種事案について参考になります.


谷直樹

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by medical-law | 2019-02-23 16:29 | 医療事故・医療裁判