弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

肺がんの見落とし事案で,専門医を確保するなど適切な検診体制を整備する義務を怠ったとして杉並区等を提訴(報道)

産経新聞「がん見落とし、患者が賠償求め提訴 医療法人と杉並区に」(2019年2月28日)は次のとおり報じました.

「東京都杉並区の河北(かわきた)健診クリニックが検診で肺がんを見落としていた問題で、70代の男性が、適切な治療を受けられずにがんが進行したとして、クリニックを運営する社会医療法人「河北医療財団」と杉並区に計約1600万円の損害賠償を求める訴訟を28日、東京地裁に提起した。

 男性の代理人によると、クリニックは平成29年8月、男性の胸部エックス線検査の画像診断で異常陰影が写っていたのに「異常なし」と判断。区が再検証したところ精密検査が必要だったと判明し、30年8月に関連病院で「ステージ3」と診断された。その後、別の病院に入院したが、腫瘍が大きく切除が困難とされ、現在は通院しながら抗がん剤治療を行っている。
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 訴状では、29年の検査時点では「ステージ1」(5年生存率83.8%)だったのに、クリニックの初歩的な見落としで「3」(同22.4%)まで進行し、精神的苦痛を負ったと主張。区は専門医を確保するなど適切な検診体制を整備する義務を怠ったとしている。

 提訴に先立ち、男性側は法人側に謝罪と損害賠償の一時金を求める交渉を実施。法人側は法的責任を認める見解を示したものの「慰謝料などは治療が終わらないと提示できない」と回答したため提訴に踏み切ったという。

 男性は治療でアルバイトを休業中。「どんな治療が必要になるか分からず不安」と話しているといい、会見した代理人の梶浦明裕弁護士は「早期に補償を約束してほしい」と述べた。

 河北医療財団は「訴状を確認していないのでコメントできない」とし、杉並区の田中良区長は「訴状が届き次第、対応を検討します」とコメントした。

 問題をめぐってはクリニックで肺がんを見落とされていた40代女性が30年6月に死亡。区が過去の画像を再検証し、44人に精密検査の必要があると発表した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
梶浦裕明先生と川見未華先生が担当している事件です
一般に,画像から見落としが明らかな事案では,医師の注意義務違反(過失)は争いがなく,因果関係・損害の争いになることが多いと思います.平成29年8月にステージⅠであったものが平成30年8月にステージⅢに進行したことの慰謝料について1600万円と主張しています.5年生存率低下による慰謝料400万円を認めた東京地裁平成18年4月26日判決の4倍ですので,どのように立証するのか,注目したいと思います.
また,区に対し,専門医を確保するなど適切な検診体制を整備する義務を怠ったと主張していますが,これもどのように立証するのか,注目したいと思います.
挑戦的な裁判になると思いますが,がんの見落としの再発防止の体制整備につながることを期待いたします.

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谷直樹

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by medical-law | 2019-03-03 15:54 | 医療事故・医療裁判