神戸地裁平成31年4月9日判決,未破裂脳動脈瘤を見落とした事案で330万円の支払いを命じる(報道)
神戸新聞「見落とした脳動脈瘤が破裂 ○○病院側に330万円支払い命令」(2019年4月9日)は,次のとおり報じました.
「○○病院の医師が診察で未破裂脳動脈瘤を見落としたため、直ちに治療が受けられずに破裂したとして、同市の女性(81)が病院側に約7550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、神戸地裁であった。和久田斉裁判長(阿多麻子裁判長代読)は医師に「注意義務違反があった」とし、病院側に330万円の支払いを命じた。
女性は2012年7月に同病院で検査を受け、医師は「明らかな病変はない」と診断。13年6月に別の医療機関に救急搬送され、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血と診断された。
判決は「医師が見落とした注意義務違反によって、外科的治療を選ぶ機会を奪われた」と指摘。一方、仮に医師が見落とさなくても「女性が経過観察を選んだ可能性も相当程度あった」とした。」
同病院側は「判決文が届いていないので、現時点ではコメントできない」としている。」
報道の件は私が担当したものではありません.
日本は,未破裂動脈瘤の治療率が高い国です.
見落としが無く,未破裂動脈瘤が発見された場合,経過観察されることは少ないでしょう.径7mm以下の動脈瘤でも生涯破裂率は25%ですので,小型でもスコアリングで年間3%以上の破裂率があれば治療することが多いと思います.
この件は,動脈瘤の大きさ,部位,形状が報じられていませんが,患者の81歳女性と報じられています.
脳ドックを受けた70歳以上の女性では14.8%に未破裂動脈瘤があったという報告があります(径3mm以下のものも含まれます).
81歳女性は高齢と言っても平均余命が11年あります.81歳だから治療せず経過観察したとは言えないでしょう.
当該ケースの破裂率を計算し,基本的に,年間3%以上であれば治療した,3%未満であれば経過観察した,と考えることができると思います.
谷直樹
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