弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

提言第8集「救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析」

一般社団法人 日本医療安全調査機構は,2019年4月22日,医療事故の再発防止に向けた提言第8号「救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析」を公表しました.

【救急医療における画像検査の意義】
救急医療における画像検査は確定診断を追究することより、緊急性の高い死につながる疾患(killer disease)を念頭において読影することが重要である。特に、頭部外傷による少量の出血、大動脈瘤切迫破裂や大動脈解離の画像所見、腸管穿孔による遊離ガス像に注目する。

【画像検査依頼時の情報共有】
画像検査を依頼する医師は、臨床症状および疑われる疾患、特に否定したい疾患について明確に依頼書に記載し、診療放射線技師・放射線科医師と情報を共有する。

【救急外来における撮影画像の確認】
担当医師一人ではなく、上級医師や放射線科医師などの複数の医師がそれぞれの視点で画像を確認し、所見について情報を共有する。救急外来における診療放射線技師は、緊急度の高い所見を発見した場合、読影する医師にすみやかに情報を提供する。また、情報通信技術(ICT)を用いた院外からの読影も有用である。

【画像検査の追加と入院・帰宅の判断】
当初の画像検査だけでkiller diseaseを否定できない場合は、単純CTさらには造影CTなどの追加を行う。確実に否定できるまでは診療を継続し、その間に観察した症状は医療従事者間で情報共有することが重要である。

【画像診断報告書の確認とincidental fi ndings】
救急診療後に作成される画像診断報告書の確認が確実にできるよう、責任者を決めて対応する。また、当初の検査目的以外で偶発的に認められた異常所見(incidental fi ndings)について、担当医師による対応が必要な所見は確実に伝達されることが重要である。

【院内体制の整備】
救急医療においてkiller diseaseを鑑別するための教育体制、救急医療にあたる担当医師への支援体制、重要所見を含む画像診断報告書の確認と対応を把握できる体制を整備する。これらを通して、すべての医療従事者が画像検査に係る医療安全に主体的に関わる文化を醸成することが望まれる



谷直樹

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by medical-law | 2019-04-23 08:31 | 医療事故・医療裁判