肺一部切除手術で出血死の事案,数千万円で和解(報道)
「北九州市の○○病院で2014年2月、肺気胸を患う福岡県行橋市の男性会社員=当時(23)=の肺の一部を切除する手術で医療ミスがあり、男性が出血性ショックで死亡していたことが23日、分かった。男性の両親は16年10月、病院に損害賠償を求める訴えを福岡地裁小倉支部に起こし、支部は今年1月、病院が注意義務を怠ったと認定した。近く数千万円を支払うことで、和解する見通し。
両親の代理人弁護士によると、地裁小倉支部は手術中に医師が操作した器材で、下肺静脈から左心房にかけての部位を傷つけたことが大量出血の原因と考えられるとし、「注意義務があったのに、これを怠った」と認定。和解を提案した。病院側も和解に応じる意向という。
訴状などによると、男性は高校生のころから気胸を繰り返し発症していた。再発を防ぐため、肺の一部を切除する胸腔(きょうくう)鏡手術を受けた際に大量に出血。止血できないまま死亡した。
病院は責任を認めなかったため、両親は、慰謝料など約1億1千万円を求め提訴。手術のずさんさや胸腔鏡手術のリスクの説明不足、他の治療法を選ばなかったことなどが死亡につながったと主張した。
病院側は取材に「まだ正式な和解に至っておらず、現時点ではコメントできない」としている。
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「油断あったのでは」両親が訴え
○○病院で受けた肺の一部を切除する手術で死亡した男性の両親は23日、福岡県行橋市の自宅で西日本新聞の取材に応じた。「結婚したり、子どもができたりと楽しいことがいっぱいあったはずなのに」。北九州市の企業に就職したての社会人1年生。23歳の若さで息子が亡くなったことへの悲しみや悔しさを明かした。
男性が手術を受けることを決めたことを、母親(53)は「真面目な子。会社に迷惑をかけたくないと話していた」。胸腔鏡手術のリスクや他の治療法については「病院側から十分な説明はなかった」と強調した。
1月の和解提案後、手術を担当した医師が両親に謝罪したという。父親(59)は「油断があったのではないか。どんな手術でも、患者を一番に考えてほしい」と訴えた。」
NHK「手術で失血死 遺族と病院和解へ」(2019年4月24日)は次のとおり報じました.
「北九州市の病院で5年前、肺の手術を受けた20代の男性が出血性ショックで死亡しました。
男性の両親は「医療ミスだ」などとして賠償を求める裁判を起こしていて、病院側が数千万円を支払うことで、近く和解が成立する見通しです。
訴状によりますと、5年前、当時23歳の行橋市の男性が肺気胸の治療のため、北九州市の○○病院で左の肺の一部を切除する手術を受けた際、出血が止まらなくなり、そのまま出血性ショックで死亡しました。
男性の両親は「手術中の不適切な処置で、致命的な血管の損傷を引き起こしたうえ、不十分な止血しかできなかったのは医師らの過失だ」などとして、病院を相手に1億1400万円余りの賠償を求める訴えを福岡地方裁判所小倉支部に起こしていました。
両親の代理人の弁護士によりますと、裁判所はことし1月、「肺の血管などを傷つけないよう、手術用の器具を操作すべきだったのにこれを怠った」などと指摘して病院側の過失を認め、和解を提案したということです。
これを受けて、双方が協議した結果、病院が数千万円を支払うことで近く和解が成立する見通しです。
○○病院は「和解が成立するまで、コメントは差し控える」としています。」
報道の件は私が担当したものではありません.
数千万円の和解金額からすると,裁判所が注意義務違反と因果関係を認めた事案と考えられます
医療裁判では,原告側(患者側)に具体的な結果回避の方法を特定し主張立証することが求められます.つまり。原告側(患者側)は,具体的にどのような注意をすれば結果を回避できたか,を主張立証しなかればなりません.
ただ,手技ミスの場合は,致命的な血管損傷を起こさないように器具を操作することと言う以上に特定が難しいこともあります.手術のどの段階でどの血管をどのように傷付けたかによって,それが注意すれば回避できた場合か否かを判断せざるを得ない場合もあります.肺の一部切除はよく行われる手術であり,それにより出血死することは非常に少ないことからすると,一般に,特別な事情がない限り,肺の一部切除手術で致命的な血管損傷を引き起こし出血死させたら,裁判所は医療側に責任があると判断することが多いと思います.
谷直樹
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