和泉市の無痛分娩死亡事故,検察審査会へ審査申立
「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで2017年、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31)=が死亡した事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された男性院長(61)の不起訴処分を不服とし、遺族が2日までに大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。受理は6月26日付。
申立書によると、院長は長村さんの脊髄近くにカテーテルを入れ麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているかどうか確認を怠った。麻酔の効き具合の確認などを十分にせず死亡させた過失は重大だとしている。」
上記報道の件は,私が担当している事件です.
6月25日に審査申立書を郵送し,6月26日に受理されました.
過失については,次のとおり主張しています.
「被疑者は,アナペイン注入前の吸引テストを行わず,アナペイン注入後の下肢の運動麻痺の有無の確認もしなかった。被疑者が,カテーテルが適切に留置されているか否かを確認することを怠り,0.75%アナペイン(一般名ロピバカイン)3mLと5mLをそれぞれ注入したことは,業務上の過失にあたる。」
検察審査会の市民感覚に期待したいと思います.
【追記】
産経新聞「無痛分娩死で検審申し立て 院長不起訴に遺族」(2019年7月2日)は次のとおり報じました.
「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで平成29年、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31)=が死亡した事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された男性院長(61)の不起訴処分を不服とし、遺族が大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。受理は6月26日付。
申立書によると、院長は長村さんの脊髄近くにカテーテルを入れ、麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているかどうか確認を怠った。麻酔の効き具合の確認などを十分にせず、死亡させた過失は重大だとしている。
2日に大阪市内で記者会見した長村さんの父、安東雄志さん(70)は「起訴すべきものは起訴にして裁判で決着をつけるのが正しいやり方」と訴えた。
院長は29年10月、大阪府警に書類送検されたが、今年4月に大阪地検が嫌疑不十分で不起訴とした。」
MBS「無痛分娩で出産後に死亡 不起訴不服で遺族が検察審査会に申し立て」(2019年7月2日)は次のとおり報じました.
「大阪府和泉市の産婦人科医院で無痛分娩で出産に臨み死亡した女性の遺族が、院長を不起訴とした検察の処分を不服として検察審査会に申し立てを行い7月2日までに受理されました。
おととし1月、和泉市の産婦人科医院○○クリニックで、長村千惠さんが無痛分娩で出産中に意識不明となり10日後に死亡しました。その後、クリニックの院長が業務上過失致死の疑いで書類送検されましたが今年4月、不起訴処分となりました。
遺族らは「誤った位置に挿入されたカテーテルに院長が無痛分娩の麻酔薬を投与したため呼吸が停止した」などと検察審査会に申し立て、7月2日までに受理されたということです。」
読売新聞「無痛分娩で死亡 検審申し立て」(2019年7月3日)は次のとおり報じました.
「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで2017年、無痛分娩(ぶんべん)をした女性が死亡した事故で、夫(35)ら遺族2人が男性院長(61)を不起訴(嫌疑不十分)にした大阪地検の処分を不服として、大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。6月26日付。
事故では、大阪府枚方市の長村千恵さん(当時31歳)が17年1月、出産の痛みを和らげる局所麻酔後、呼吸困難に陥り、10日後に低酸素脳症で死亡。帝王切開で生まれた次女は無事だった。
大阪府警は17年10月、院長を業務上過失致死容疑で書類送検。地検は今年4月に不起訴としていた。遺族側は申立書で「院長は麻酔の針を深く刺しすぎたのに、刺さり具合を確認する注意義務を怠った」と主張している。」
この読売新聞の報道は正しくありません.遺族は「院長は麻酔の針を深く刺しすぎたのに、刺さり具合を確認する注意義務を怠った」などとは主張していません.麻酔針を深く刺しすぎた事実はありません.刺さり具合を確認する注意義務を主張していません.硬膜外カテーテルが適切に留置されているか否かを確認することを怠ったと主張しているのです.
また,全脊髄くも膜下麻酔は,帝王切開の適応ではありません.つまり,この件は帝王切開すべき事案ではありません.
谷直樹
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