千葉県病院局経営管理課,大動脈弁置換の患者死亡についての調査報告書公表
【術後12日目の死亡事案】
70歳代女性
大動脈弁狭窄症の患者が大動脈弁置換術を受けた結果術中の逆行性心筋保護に起因すると考えられる冠状静脈洞の損傷、出血から、術後12日目に死亡するに至った。定型的な予定手術の大動脈弁の人工弁置換術であったが、術中の損傷が原因となり、縫合操作を加えても完全な止血が得られず、心機能が低下したため補助循環を導入し回復を図ったが、死亡に至った。
【調査報告書の概要】
冠状静脈洞の損傷、出血については、術中の逆行性心筋保護用のカニューレ挿入の際に、心外膜側からは見えにくい冠状静脈の内側の血管壁をカニューレの先端が傷つけ、出血し血腫を形成していた可能性が高い。このため、出血点を正確に特定するのが難しかったと思われる。
心臓後面からの出血が認められた時点で逆行性心筋保護注入を中止し、順行性心筋保護に切り替えたこと、そのまま大動脈弁置換を続行し終了したことは妥当な判断である。
当初、カニューレが突き破った部分から出血していると考えて縫合し、そのことが亀裂の増大に繋がっていったが、その時点で、出血場所が特定できていなかったため、やむを得ない判断である。
手術適応の判断に問題はなかった。手術の詳細やリスクが執刀医から説明されたのは手術の2日前であり、患者が手術以外の選択肢とメリットデメリットを比較する熟慮期間が十分ではなかった。
再発防止のため、心筋保護カニューレ挿入の安全性を確保するための体制整備とマニュアルの明文化、チーム診療体制の構築、インフォームド・コンセントの保証と熟慮期間の確保等を推奨する。
谷直樹
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