弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大阪府警,心臓カテーテルのワイヤ抜き忘れ死亡事故で医師2名を書類送検(報道)

産経新聞「体内にワイヤ残し手術せず手で抜き死なす 医師2人を書類送検」(2019年8月1日) は次のとおり報じました.

「大阪府寝屋川市の病院で平成29年11月、カテーテルのワイヤを抜き忘れる医療ミスにより同市の無職、鈴木博さん=当時(69)=が死亡した事故で、大阪府警は1日、業務上過失致死容疑で、ワイヤを抜き忘れた「寝屋川生野病院」(同市)の男性医師(71)を書類送検。適切な措置を取らないままワイヤを抜いて死なせたとして、同容疑で「明生病院」(大阪市都島区)の男性医師(47)も書類送検した。

 寝屋川生野病院の医師の書類送検容疑は29年11月、鈴木さんの体内にカテーテルを挿入した際にステンレス製のワイヤを抜き忘れたとしている。

 明生病院の医師の書類送検容疑は30年2月、手術などの適切な措置を取らずにワイヤを手で抜いた際、鈴木さんの心臓を傷つけて死亡させたとしている。府警は2人の認否を明らかにしていない。

 捜査1課によると、鈴木さんは寝屋川生野病院で肺炎と診断され、脚の付け根からカテーテルを誘導するためのワイヤを挿入。カテーテルの挿入完了後、ワイヤをすぐに抜き取る必要があるが、書類送検された同病院の医師は「(鈴木さんの)容体が悪化し、その処置をしている間にワイヤを抜いたと思い込んだ」と説明している。

 また医師は、カテーテル挿入後に撮った胸部のレントゲンにワイヤのようなものが写っていたにもかかわらず、別の治療で使った医療チューブが体内にあると思い込んで詳しい検査をしなかったという。

 鈴木さんはその後、明生病院に転院。明生病院の医師は、レントゲンで体内のワイヤを発見し、手で抜き出したが、鈴木さんは容体が急変して死亡した。

 府警は2人の医師の過失が重なり、鈴木さんを死亡させたと結論付けた。」


産経新聞「病床でも気遣い 医療ミスで死亡の鈴木さん 大阪・寝屋川」(2019年8月1日) は次のとおり報じました.

  「仕事忙しいんか。がんばり過ぎないように」

 大阪府寝屋川市の病院で平成29年11月、カテーテルのワイヤを抜き忘れる医療ミスで医師2人が書類送検された事件。死亡した鈴木博さんは、体調を崩して病院や介護施設へ頻繁に通うようになってからも、見舞いに来る人にそんな声をかける優しい人柄だった。

 めいの女性(46)は「体調が優れないときは周囲にきつくあたることもあったけど、すぐに『あの時はごめん』と謝る素直な一面があった」と振り返る。

 食べることが大好きだった鈴木さん。体調面から食事を満足にとれない時期もあったが、リハビリを積極的に行い、死亡する数日前にはスイートポテト味のゼリーを食べ、「もっと食べたい。おいしかった」と笑っていたという。

 鈴木さんの突然の死に、女性は「二度とこんな悲しいことが起きないよう、病院には再発防止を求めたい」と悔しさをにじませる。大阪府警が書類送検した男性医師2人については「なぜ、こんな形で死亡しなければならなかったのか。本当のことを話してほしい」と訴える。

 今後は捜査の進展を見守りながら、病院側に損害賠償を求める民事訴訟も検討しているといい、「真相が知りたい。それだけなんです」と話した。」


毎日新聞「カテーテルのワイヤ放置、引っ張り男性患者死亡 大阪の医師2人を書類送検」(2019年8月1日)は
次のとおり報じました.

 「大阪府内の病院で患者の体内に放置されたカテーテル(管)のワイヤを抜く際、心臓を傷つけて死亡させた事故を巡り、大阪府警は1日、放置した寝屋川生野病院(同府寝屋川市)の男性医師(71)と、抜いた明生病院(大阪市都島区)の男性医師(47)を業務上過失致死容疑で書類送検した。起訴を求める意見を付けた。

 府警捜査1課によると、亡くなったのは寝屋川市の無職、鈴木博さん(当時69歳)。2017年11月に肺炎などの治療で寝屋川生野病院に入院し、体内に栄養分を送るカテーテルを脚の付け根から入れた。明生病院に転院し、18年2月5日にワイヤを抜く手術を受けたが、心臓の周囲に血液がたまって圧迫する「心タンポナーデ」で同日死亡した。

 送検容疑は、寝屋川生野病院の医師はカテーテルの誘導に使った約1メートルのワイヤを抜き忘れて体内に放置。明生病院の医師はワイヤを抜く際に心臓を傷つけないための開胸手術などをせず、そのまま力を加えて引っ張るなどした結果、死亡させたとされる。

 寝屋川生野病院の医師は「容体が悪化した処置の間にワイヤを失念した」と供述し、明生病院の医師は開胸手術なしで対応できると考えたという。府警は2人が手術で必要な注意を怠ったと判断した。2人の認否を明らかにしていない。

 寝屋川生野病院は「事案の重大性を痛感している」、明生病院は「医療事故防止態勢の強化についてなお一層の努力を行う」とのコメントを出した。

 鈴木さんの親族の女性(46)は取材に対し、「一つの節目を迎えたが、心の整理ができず、まだ死を受け入れられていない。2人の医師が反省しているのか知りたい」と声を落とした。【伊藤遥、土田暁彦】」



報道の件は私が担当したものではありません.
医療過誤事案がすべて起訴相当とは思いませんが,一般的な医療から逸脱が著しい事案では起訴が相当と考えます.
大阪検察庁の厳正な対応を期待したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2019-08-01 23:50 | 医療事故・医療裁判