弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

九州労災病院,検体取り違えによる子宮頸がん診断治療の遅れで因果関係を争い裁判(報道)

読売新聞「がん検体 陰性と取り違え…九州労災病院 患者死亡で遺族提訴」(2019年8月23日9は次のとおり報じました.

「九州労災病院(北九州市小倉南区)が、子宮頸 がんを疑われた大分県内の女性患者の検体と、別の陰性患者の検体を取り違えていたことがわかった。取り違えが原因でがんの発見が遅れ女性が死亡したとして、遺族は損害賠償を求めて提訴。病院側は死亡との因果関係はないと主張している。

 訴状などによると、女性は不正出血が続いたため、2014年1月に同病院で子宮細胞のがん検査を受け、陰性と説明された。その後も出血が続き、同10月に大分県内の医療機関を受診したところ陽性と判明。九州労災病院の再検査で、子宮頸がんが進行していることが確認された。

 同病院は同12月、同じ日に検査を受けた別患者の検体にラベルを貼り間違えたとして謝罪。女性の検体は「疑陽性」だったという。

 女性は別の病院で子宮の全摘手術や放射線治療を受けたものの、15年8月に再発が判明し、17年4月に58歳で死亡した。

 遺族は同10月、九州労災病院側に約6400万円の損害賠償を求めて福岡地裁小倉支部に提訴した。

 同病院は読売新聞の取材に「係争中なので一切答えられない」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
医療過誤による損害賠償には,過失,因果関係,損害の立証が必要です.
2014年1月の検体取り違えが過失にあたるであることは疑いの余地がありません.
問題は因果関係です.
原告は,2014年1月に検体の取り違えがなければ,子宮頸がんを発見し,治療し,その結果2017年4月に死亡しなかったことを立証する必要があります.
子宮頸がんは早期に発見治療すれば予後良好な疾患ですが,毎年約3000人が死亡しています.
報道の件は手術,放射線治療後1年経たないうちに再発していますので,2014年10月時点ではかなり進行していた可能性が高いように思います.2014年1月の時点で子宮頸がんの状態がどのようなものかが問題になります.10か月間でがんはかなり進展したのではないでしょうか.
判決はどのようになるのか,注目したいと思います.
ちなみに,私は以前子宮がんの見落とし事件を担当したことがありますが,判決ではなく,勝訴的和解で終わりました.


谷直樹

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by medical-law | 2019-08-23 13:31 | 医療事故・医療裁判