弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

食道に入れるべき栄養補給用チューブを気管に挿入し,肺に孔をあけ窒息死させた事案で業務上過失致死罪の成否が争われる(報道)

産経新聞「挿管ミス罰金50万円求刑 元准看護師、入所者死亡で」(2019年10月2日)は次のとおり報じました.

「山形市の介護施設で平成28年、入所者の女性=当時(87)=が栄養補給用チューブを肺に誤挿入されて窒息死する事件があり、業務上過失致死罪に問われた、施設の元准看護師、A被告(74)=同市=の公判が2日、山形地裁(児島光夫裁判長)で開かれ、検察側は罰金50万円を求刑した。

 検察側は冒頭陳述で「チューブ挿入時、女性は大きくせき込んだ。食道ではなく気管に入ったと疑うのは基本だ。肺に穴を開けて死なせると予見できた」と主張。弁護側は誤挿入で死亡させたことを認める一方で「女性は苦しむ様子を見せず、危険性を予見できなかった」と無罪を主張した。

 起訴状によると、28年2月26日、女性の鼻から胃にチューブを入れる際、女性がせき込んだ場合は気管への誤挿入を疑って作業をやり直す注意義務があったのに、漫然と挿入を続け左胸膜に穴を開けて、翌27日に窒息死させたとしている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
食道挿管の逆で,食道に入れるべきチューブを気管に挿入し,肺に孔をあけ死亡させた事案です.危険性を予見できなかったなどという無罪主張が裁判所に通用するのでしょうか?
ちなみに,経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入していたが、気泡音の聴取のみで胃内にチューブが入ったと判断し、栄養剤や内服薬を注入した事例が11件報告されています(集計期間:2013年1月1日 ~2016年 1 0 月 3 1 日 )。National Patient Safety Agency では2003 年から2004 年の2年間に11 例の死亡例が報告されています.
」栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析」(2018年9月)は,2010 年 1 月 1 日以降に報告された胃管挿入に関連した死亡事例 5 例中気管・肺への挿入が 3 例あったとしています.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


by medical-law | 2019-10-02 22:06 | 医療事故・医療裁判