弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

岡山市の病院,重篤な肝機能障害の疑いがある患者の食道を再建手術で肝臓の一部を切除した事案で提訴される(報道)

山陽新聞「「明らかな医療過誤」と遺族提訴 岡山地裁、60代男性死亡で」(2019年10月18日)は次のとおり報じました.

「岡山市立市民病院(同市北区北長瀬表町)で食道がんの手術を受けた倉敷市の60代男性が死亡したのは、執刀した医師が術前検査を十分に行わず、術式を誤ったためとして、男性の遺族が、病院を運営する地方独立行政法人岡山市立総合医療センターと医師に慰謝料など総額約6180万円の損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こしたことが17日、分かった。

 訴状などによると、男性は2017年2月、同病院の検査で早期の食道がんが見つかり入院。当時、アルコール依存症で重篤な肝機能障害の疑いがあり、手術のリスクを踏まえて放射線療法など他の治療法も検討するべきだったのに、医師は肝機能検査を行わず同年3月、がんの患部を切除し、胃管を用いて食道を再建する胸腔鏡(きょうくうきょう)手術を行った。

 医師は2日後、出血性ショックに陥っていた男性に対し、約10時間に及ぶ止血や別の臓器を用いた無理な食道再建手術を実施。しかし男性はその4日後に容体が悪化し、翌日死亡した。

 医師は最初の手術の際、食道再建の妨げになった肝臓の一部を遺族に説明することなく切除しており、遺族側は「必要な検査と説明をせず、適切な治療を受ける機会を失わせた」と主張。岡山地裁に証拠保全を申請して入手したカルテを第三者の専門医に示し「明らかな(医療)過誤がある」と判断された鑑定書も証拠提出している。

 提訴は今月10日付。男性の30代長男は取材に対し、手術の途中で手術室に呼ばれ、開腹した状態で臓器を見せられたと言い、「家族の感情を無視したあまりにも不誠実な対応だ」と話した。

 岡山市立総合医療センターの松本健五理事長は「訴状が届き次第、内容を精査し、適切に対応したい」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
術式選択については医師の裁量がありますが,進行肺癌患者の左肺全摘出手術,肝転移癌に対する肝切除術などで,適応がないとして責任が認められた裁判例があります.
報道の件が新しい裁判例になるか注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2019-10-23 01:25 | 医療事故・医療裁判