転倒・転落による頭部打撲(疑いも含む)の場合,頭部 CT 撮影を推奨することの意味
「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」(第9号提言書」)の[提言1]に,「転倒・転落による頭部打撲(疑いも含む)の場合は、受傷直前の意識状態と比べ、明らかな異常を認めなくても、頭部 CT 撮影を推奨する。」と記載されていました.
これについて,「頭部打撲の疑いがある事例全例について頭部CTを撮影することを義務付けるものであるのか。」という懸念の声が寄せられました,とのことです.
そこで,日本医療安全調査機構は,次の2点を示しました.
1 「医療事故の再発防止に向けた提言」については、「死亡に至ることを回避する」という視点からの考え方を示したものであり、医療従事者の裁量を制限したり、新たな義務を課したりするものではないこと
2 提言は、患者の傷病の状況、年齢、本人やご家族の希望の他、診療体制・規模等を総合的に勘案のうえ、活用していただきたいこと
とくに問題になるのが小児の場合です.一般に,意識状態の判断が難しい小児の軽症頭部外傷では,受傷機転,打撲部位の状態,神経学的随伴症状などを総合的に判断して頭部CTを撮影するか決めているでしょうが,法的には,医療裁量と患者の決定権との関係に一石を投じる問題です.家族が頭部CTを撮影を希望している場合撮影義務があるという考え方もあります.治療において患者の決定権があるように,検査においても患者の決定権があります.そもそも検査適応がない場合でなければ,検査のリスク(被曝リスク等)を説明しても,なお患者が希望するとき,検査が可能であれば,検査を行わないわけにはいかないように思います.
谷直樹
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