弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

集団健診の胸部X線検査で肺に陰影があったのに「異常なし」とされ死亡した事案で2300万円和解(報道)

京都新聞「健診で肺がん見落とし48歳男性死亡 遺族に2300万円支払いで和解」(2019年12月10日 )は,次のとおり報じました.

「健康診断でがんを見落とされて死亡したとして、滋賀県の男性=当時(48)=の遺族が、野洲市の○○センターに損害賠償を求める民事調停を大津簡裁に申し立て、同センターが計2300万円を支払うことなどで和解が成立したことが10日、分かった。9日付。

 遺族の代理人弁護士によると、男性は2014、16年、センターの健康診断で胸部エックス線検査を受け「異常なし」と判断された。しかし17年9月ごろ、ステージ4の肺がんが見つかり、同年12月に死亡した、という。

 遺族側は、センターが検査で肺の陰影を見落としたとし、昨年12月、約7500万円の支払いを求めて調停を申し立てた。センターは「検査結果からは分かりようがない」などと主張していた。

 和解について、代理人弁護士は「再発防止の意向が一定、得られたので応じた」とし、センター側は「過失については争いはあるが、早期解決を優先した」とコメントした。」



読売新聞「健診でがん見落とし和解、男性の遺族と実施機関…大津簡裁」(2019年12月10日)は次のとおり報じました.

「健康診断で肺がんを見落とされて死亡したとして、滋賀県内の男性(当時48歳)の遺族が、○○センター(滋賀県野洲市)に損害賠償を求める民事調停を申し立て、大津簡裁で9日、同センターが計2300万円を支払うことなどで和解が成立した。

 遺族の代理人弁護士によると、男性は2014年と16年、勤務する会社の定期健診で同センターの胸部X線検査を受け、画像診断で「異常なし」とされた。しかし17年9月頃に体調を崩し、病院で進行した肺がんが見つかった。男性は入院後、同年12月に死亡した。

 遺族側は、いずれの検査でも肺に陰影があったのにセンターが見落としたとして18年、約7500万円の支払いを求めて調停を申し立てた。

 センターは当初、14年の時点で発見は不可能で、16年も困難だったと主張していたが、解決金を支払い、再発防止に取り組むなどの内容で和解した。


 男性の妻(45)は9日、取材に対し「集団健診は全国で多くの人が利用しており、二度と同じミスが起こらないことを願う」と話した。センターの代理人弁護士は「画像診断だけでは発見が難しいこともあるが、再発防止に努めたい」としている。」



上記報道の件は私が担当したものではありません.
集団健診については,最判平15・ 7 ・18(民集57巻7号815頁)がある関係で,裁判上は高い注意義務を求めにくい状況にあります.ただ,画像診断技術は向上していますし,禁煙は,医療関係者の間では,大量の画像を見る集団健診であっても,陰影の見逃しは許されない,という共通認識があるように思います.
古い裁判例を,現状にあうように変更する必要があるかもしれません.


谷直樹

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by medical-law | 2019-12-11 02:02 | 医療事故・医療裁判