東京地裁令和元年12月12日判決,個人が自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益と認め,国に132万円の支払いを命じる(報道)
NHK「“心は女性” 女性トイレの使用認めない国に賠償命令 東京地裁」(2019年12月12日 )は次のとおり報じました.
「性同一性障害で心は女性の経済産業省の職員が、職場で女性用トイレの使用が認められないのは不当な差別だと訴えた裁判の判決で、東京地方裁判所はトイレの使用を認めないとした国の措置は違法だとして取り消し、国に130万円余りの賠償を命じました。
心は女性で体は男性の性同一性障害と診断された経済産業省の50代の職員は、職場で女性用トイレの使用を認められないのは不当な差別だとして、国に対して処遇の改善や、1650万円余りの賠償を求めました。
職員は自分の部署のフロアでは女性用トイレの使用が認められず、2階以上離れたフロアでトイレを使うよう言われていて、国側は「ほかの女性職員との間でトラブルが生じるおそれがあり、合理的な判断だ」と主張して争っていました。
12日の判決で東京地方裁判所の江原健志裁判長は「個人が自分で認識する性別にあった社会生活を送ることは重要な法的利益として保護されるべきだ。性同一性障害を含むトランスジェンダーの人が働きやすい職場環境を整えることの重要性はますます強く意識されるようになってきている」と指摘しました。
そのうえで「職員は女性として認識される度合いが高く、男性用トイレを使うことも現実的に困難だ。女性用トイレの使用を認めないのは社会観念上、妥当ではなく、違法だ」として、女性用トイレの使用を認めないとした国の措置を取り消したうえで、国に130万円余りの賠償を命じました。
原告の職員「平等にしてほしいだけ」
訴えた職員は、東京・霞が関の経済産業省で勤務しています。訴えによりますと、職員は男性として入省しましたが、職場に性同一性障害の悩みを打ち明けて相談したうえで、女性職員として働くようになりました。女性用の休憩室や更衣室の使用は認められましたが、女性用トイレについては当面の間、自分の部署の階では使用が認められず、2階以上離れた階のトイレを使うように言われています。
職員は「他の民間企業で男性として入社したあとに女性として勤務している友人はトイレの使用では何も制限がありませんでした。同じことを求めているだけなのになぜ経産省は個人のプライバシーを全く無視するような条件を突きつけてくるのか理解できません。へ理屈で少数者をおさえつけようとする態度が非常になげかわしいです」と話しています。
そのうえで職員は「私は、女性として生活している人と平等にしてほしいだけです。新しい制度や施設を作るなど時間やお金がかかることは何も求めていないので、変えようと思えば今すぐにでも変えられると思います」と訴えています。
また、裁判を通じて社会に対して伝えたいこととして「性的少数者をめぐる理解はスローガンとしては社会に普及してきたと思いますが、実際に職場や学校、家族にいたらどうするかという個別の事例に直面したときの対応は不十分だと思います。いかにひどい人権侵害か少し考えればわかるのに、今の日本ではまだ人権侵害がはびこっている現状があるので、この裁判で少しでも社会の状況が改善すればいいと思います」と話しています。
原告の職員が会見「判決は当事者を勇気づける内容」
原告の職員は判決が出たあと、東京・霞が関で会見し、「判決は同じように職場での処遇に困っている当事者を勇気づける内容だったと思います。トランスジェンダーでも個々の人によって事情はさまざまあるので、画一的にどうすればいいとは言えませんが、判決内容を踏まえて、それぞれの企業や職場でやれることはたくさんあると思いますので前向きに取り組んでほしいです」と話していました。
経済産業省「関係省庁とも相談し対応したい」
経済産業省は、「国の主張が認められなかったと承知している。控訴するかどうかは、判決を精査したうえで関係省庁とも相談のうえ、対応することとしたい」というコメントを出しました。
専門家「大きな人権侵害だと捉えていく必要」
性科学が専門で、裁判では原告側の証人として出廷した大阪府立大学大学院の東優子教授は「日常的に長時間仕事をする職場においてトイレというのは何回も使うものであり、健康上の問題にも影響がある。本人が認識する性別、性自認が理由でトイレの使用に問題が生じているのであれば職場が対応すべき重要な案件だ」と指摘しています。
そのうえで裁判について「人種や国籍、民族、あるいは宗教を理由に差別されてはいけないという基本的人権と同じように差別の問題がある。今回の裁判のように、性自認によってこのトイレを使っていけないとか、こうしなければ異動させられないということは大きな人権侵害だと捉えていく必要がある」と話しています。
また「これまではトイレや更衣室といったところで性別や性自認が問題になるとは想像もしなかったかもしれないが、あげられた声に耳を傾け、柔軟に対応していく必要がある。LGBTブームなどと言われているが、一過性のブームで終わらせるのではなく、社会が変わり続けていくことが望ましい」と指摘しています。」
ニュースを見ると,原告代理人が永野靖先生,山下敏雅先生らであることが分かります.
谷直樹
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