「まだすこしもスポオツの流行らなかつた昔の冬の方が私は好きだ。「
これはライネル・マリア・リルケ氏の,堀辰雄氏による翻訳『冬』の冒頭です.
直裁に結論・核心を先に述べている点が,法律家には好ましく感じます.
しかも,その趣旨が私には全面的に共感できます.
「人は冬をすこし怖がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。
人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、
ベツレヘムの博士のやうに、眞つ白にきらきらしながら、冬を冒して行つたものだ。
さうして私たちの冬の慰めとなつてゐた、すばらしい焚火は、力づよく活氣のある焚火、本當の焚火だつた。
人は書きわづらつた、すつかり指がかじかんでしまつたので。
けれども、助力し合つて、夢みたり、失せやすい思ひ出をすこしでも引きとどめたりすることの、何んといふよろこび……
思ひ出はすぐそばにやつて來て、夏のときよりかずつとよくそれが見られたものだ。……人はそれに彩色までした。
かうして室内ではすべてが繪のやうだつた。
それにひきかへ戸外では、すべてが版畫の趣になつてゐた。
さうして樹々は、自分たちの家で、ランプをつけながら仕事をしてゐた……」
リルケ氏は,彫刻家の妻に宛てた「セザンヌ書簡」をはじめ絵画について多くの文章を書いています.
絵のような室内と版画のような戸外.
昔の冬の情景が美しい文章です.
今日12月28日は堀辰雄氏の誕生日です.
谷直樹
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