あたらしき年のはじめに
古今和歌集の年の始の歌というと,次の歌でしょう.
おほなほびのうた
よみびとしらず
あたらしき年のはじめにかくしこそ千歳をかねてたのしきをつめ
「をへめ」とする写本もあります.
おほなほびのかみ(大直毘神)の立場からの明るい歌です.
災いをなす大禍津日神とそれを直す大直毘神らはともにイザナギの子です.
古来より,人は災いを受け,それを修復してきました.
病気は災いで,医師はそれを修復してきました.
医師が過ちを犯し損害を生じさせた場合は,法律家がそれを修復してきました.
病気を災いとすれば,医師の修復は分かりやすいでしょう.
それに対し,患者にとっては医療過誤は災いですが,医師は災いを意図したわけではないので(災いは過失によって生じたのです),法律家の修復はわかりにくいかもしれません.損害賠償のためとはいえ,医師の過失を主張し立証することは,医師を非難していると誤解されがちです.もちろん,修復は必要な仕事ですし,さらに再発防止につなげることで医療を改善し将来の災いの防止を期待できますが,どうしても誤解されやすい仕事です.
世の中は災いと修復ででいています.
災いと修復の二つの側面を独立した神の所作とみたのが,この大禍津日神・大直毘神らの二項対立構造でしょう.
谷直樹
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