弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

岩手県知事の会見について


NHK「二戸病院医療ミス 知事が陳謝」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「県立二戸病院でCT検査でガンの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が3度にわたって検査結果を見落とし、患者が死亡する医療事故があったことについて、達増知事は16日の記者会見で「ご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。

県立二戸病院では、平成27年に60代の男性患者がCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のガンが疑われると診断しましたが、主治医の呼吸器内科の医師が3度にわたって検査結果を見落としました。
男性はその後、ガンが転移し、平成29年1月に死亡しました。
県は先月、医療事故と認めた上で遺族に謝罪し、示談が成立しました。
この事故について、達増知事は16日の会見で、「示談が成立しているとはいえ、そもそもあってはならないことだ。改めてご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。
また、事故の公表が、男性が死亡してから3年たってから行われたことについて、「工夫の余地があったのかとも思うが、基本的には医療局の経営判断にゆだねられる。遺族との合意が大事なので、それに基づいた措置がとられたと理解している」と述べ、公表の方法に大きな問題はないとの認識を示しました。
一方で、遺族の弁護士は「他の医療事故と違って速やかに公表されず、はなはだ遺憾だと以前、県に伝えていた。示談するまで公表しないよう県に求めたことはない」と話しています。」


岩手放送「知事 二戸病院の医療事故で陳謝/岩手」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.
「県立二戸病院で「がん」の発見を見落とし男性患者が死亡した医療事故について、達増知事は16日の定例会見で陳謝しました。会見では医療事故の公表のあり方が問われました。

県医療局は15日、今年度上半期に県立病院で5件の医療事故の報告があったと発表しました。そのうち二戸病院では、「腎細胞がん」の発見が遅れ60代の男性が死亡しています。

(達増知事)
「ご家族の方々に私からもお詫びを申し上げたいと思います」

達増知事はこのように述べ、医療事故について陳謝しました。県立病院での医療事故について、医療局は2004年度から患者や家族の同意が得られた場合に限り公表してきましたが、その方法は医療局や病院のホームページでの発表にとどまっています。達増知事は「ホームページでの公表は患者やその家族、遺族との合意の上での方法」としたうえで…。

(達増知事)
「様々な工夫の余地があるのかと思いますし、ここは基本的には医療局の経営の判断として、情報の発表の仕方については委ねられる部分だと考えます」

このように述べ、今後の公表のあり方について具体的な言及を避けました。」


 上記記事が報じているとおり,遺族側からはむしろ公表を求めていました.

「千葉大学医学部附属病院は,2018年6月8日会見し,60代女性が2013年6月に画像診断報告書で腎がんが疑われると指摘されながら担当医が確認せず,2017年10月に腎癌が確認され,同年12月に亡くなった事案について,2013年の時点で治療していれば,その後の経過に大きな違いがあったとしています。
横浜市立大学附属病院は,2018年6月25日会見し,同市の60代の男性がCT検査で腎がんの可能性を指摘されながら院内で情報共有されず,検査から約5年半後に死亡した事案を公表し,病院長らが謝罪しました。
このような対応に比し,岩手県の本件についての対応は甚だ遺憾と言わざるをえません。」という書面を県の代理人に送っています.

 また,県がホームページで公表することに同意しましたが,遺族は病院が会見を行わないよう求めていたわけではありません.

【追記】
岩手日日新聞「あってはならない」 二戸病院がん疑い見落とし 会見で知事陳謝」(2020年1月17日)は,「達増拓也知事は16日の定例会見で、県立二戸病院で腎細胞がんを疑わせる所見を見落とし、治療が遅れ男性患者が死亡した医療事故について、「そもそも ...」と報じました.

河北新報「患者死亡の医療ミスを岩手県がHPで公表 知事「局の判断を尊重」」(2020年1月17日)は,次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(二戸市)で、コンピューター断層撮影(CT)の画像診断報告書の所見見落としによって60代の男性患者が死亡した医療ミスに絡み、県医療局が事実の公表をホームページ上で済ませたことについて達増拓也知事は16日の定例会見で「医療局の判断を尊重する」との考えを示した。
 知事は「情報公開の方法や事故の対策は医療局の経営判断に委ねられている」と説明。「県と遺族がホームページで公表するとの内容で示談した。決めたことに従った」と話した。
 患者は2015年3月にCT検査を受診。診断報告書に記載された腎細胞がんを疑う所見を非常勤医師が見落とし、適切な治療が行われないまま17年1月、腎細胞がんで死亡した。」


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-16 19:38 | 医療事故・医療裁判