弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

妊婦と新型コロナウイルス感染のリスク

朝日新聞「『妊婦の出勤停止と所得補償を』 厚労省に対応訴え」(2020年4月8日)は,次のとおり報じました.

 「妊婦への感染防止の取り組み強化を国会で訴えた国民民主党の矢田稚子参院議員が同日、自身に寄せられた431人分の妊婦の声をまとめ、厚労省の自見英子政務官に手渡した。勤務を希望する妊婦が時差通勤やフレックス勤務をできるよう企業に義務づけることや、休業した妊婦に手当が支払われるよう国が積極的に取り組むことなどを申し入れた。」
 「厚労省は感染の妊娠への影響について「胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はない」として、「過度な心配はいらない」との見解を示している。」


厚労省は,「現時点では、妊娠後期に新型コロナウイルスに感染したとしても、経過や重症度は妊娠していない方と変わらないとされています。胎児のウイルス感染症例が海外で報告されていますが、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はありません。したがって、妊娠中でも過度な心配はいりません。」としています.
たしかに,LANCET掲載の論文では母体の感染は児に影響がなかったとしています.もしかし,わずか9例に過ぎません.
日本産婦人科感染症学会は「現時点で、COVID-19感染による催奇形性や流産、死産のリスクが高いとする報告はありませんが、一定の頻度で子宮内感染を来す可能性が報告されていますので感染しないように十分気を付けてください。」としています.
厚労省見解は,何をもって「過度」というのか曖昧ですし,「心配はいりません」とまでは言えないでしょう.厚労省は,学会の見解に従い,「感染しないように十分気を付けてください。」というメッセージを発信すべきでしょう.
将来,胎児に悪い結果が発生しかつ感染していた人が国相手の集団訴訟を考えるかもしれません.厚労省見解と就労,就労と感染,感染と胎児への悪い影響,それぞれの因果関係を立証する必要がありますので,相当にハードルが高い訴訟となりますが.

新型コロナを理由とする休業については,使用者に責めに帰すべき事由がないことから,休業手当はでない,と厚労省は解釈しています.たしかに休業は使用者の責任ではないので,休業手当がでないとすると,代わりに別な枠組みで補償が必要と思います.
これは妊婦に限らず,テレワークができない仕事の人を休ませる場合に共通の問題です.
終息には,7~8割の活動停止が必要と考えられています.7~8割の活動停止のためには補償が必要と思います.
二階俊博幹事長は,「人の接触を7割とか8割とか8割5分にするとかって、そんなことはできるわけがないじゃないですか。」と言っています.つまり,政府は終息をあきらめている,と考えれば,この間の遅れ遅れで手ぬるい対策が理解できます.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ


by medical-law | 2020-04-08 11:30 | 医療