前期破水から出生までに12時間以上経過したにもかかわらず母親と新生児に抗生剤を投与しなかった過失を主張する訴訟が提訴される(報道)
「○○病院(○○市)が分娩(ぶんべん)時に抗生剤投与を行わなかったために、生後1歳9カ月の男児が細菌性髄膜炎で死亡したとして、同区の両親が21日までに、病院を運営する○○会に慰謝料など計約6千万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁○○支部に起こした。病院側は請求棄却を求める答弁書を提出し、争う方針。
訴状によると、母親は2016年6月30日午後6時ごろ、前期破水して同病院に入院した。翌7月1日午前11時ごろ陣痛促進剤の投与を受け、約6時間後に男児を出産。男児はチアノーゼや心不全症状などで別の病院に搬送され、細菌性髄膜炎と診断された。その後、人工呼吸や経管栄養などが必要な状態で入退院を繰り返し、18年4月6日に死亡した。
両親は、前期破水から出生までに長時間経過し細菌に感染する危険性があるにもかかわらず、母親と新生児に抗生剤を投与しなかった過失などを主張している。
病院側の代理人弁護士は「診療行為の妥当性を主張する」としている。」
報道の件は私が担当したものではありません.
「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」では,妊娠 37 週未満の前期破水には抗菌薬を投与することが推奨されています(推奨度B).「産婦人科診療ガイドライン産科編2014」にはその記載はありません.
妊娠 37 週以降の前期破水に対する抗菌薬のルーチン投与による,母児への有益性は示されていませんが,サブ解析で前期破水から12 時間以上経過する場合には,抗菌薬投与が絨毛膜羊膜炎および子宮内膜炎を減少させることから,抗菌薬の感染予防効果も否定されたともいえません.
報道の件は,妊娠週数が報じられていませんが,誘発を行っていますので,妊娠 37 週以降の前期破水で,前期破水から12 時間以上経過した場合なのでしょう.
2016年の出産で,注意義務違反,因果関係が認められるか,注目したいと思います.
谷直樹
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