日本医師会,投与禁忌または副作用、基礎疾患治療のための服薬中の他剤との相互作用などを十分に注意することを前提とし入院初期のハイリスク者に対するアビガン等の投与を要望
「横倉義武会長は、新型コロナウイルスに感染した人で症状が急速に悪化する事例があることをあげ、「高齢者のほか、高血圧などの循環器疾患のある方や糖尿病の方、あるいは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患をお持ちの方、がんや各種免疫不全などの基礎疾患を有する方は重要化しやすい傾向にある。これらハイリスクの方はより早期に対応することが必要であろう」と指摘。
新型コロナウイルスの治療薬・ワクチン開発が進められる中、アビガンの早期投与によって症状の改善がみられた事例が報告されている。また、政府がアビガンの備蓄を増やしている状況を鑑み、「投与禁忌または副作用、基礎疾患治療のための服薬中の他剤との相互作用などを十分に注意することを前提とし、備蓄されているアビガンを活用して、入院初期のハイリスク者に対する投与を推進していただきたい」とした。早期投与を行うのはアビガンだけでなく、「レムデシビル」「アクテムラ」「オルベスコ」など効果があるとされるものだとした。」
すでに,4月21日には。九州大学病院,福岡大学病院及び福岡市が「新型コロナウイルス感染症の治療薬に関する要望」を厚生労働大臣に提出し,まず、国家戦略特区に指定されている福岡市において,倫理審査委員会の承認手続を省略し,感染症の専門医師が、問診やCT検査の状況、副作用(催奇形性)等を考慮し、本人に説明し同意を得た上で、投与の決定を行うことを要望していました.
アビガンの阻害活性は,インフルエンザウイルスだけでなく,ほとんどのRNAウイルスのRdRpに対して,伸長を停止する活性を有する,とされています.本庶佑教授は,PCRを毎日1万人以上に増やし,野戦病院での戦いであることを自覚し,急性期にはアビガン,重症肺炎時にはアクテムラを実地導入すべきと提言しています.
しかし,アビガン等はまだCOVID-19に対する臨床試験が終わっていません.クロロキン,アビガン及びレムデシビルの3剤の比較試験が進行中です.4月8日に中外製薬がアクテムラの国内第III相臨床試験)を実施すると発表したばかりです.オルベスコについては,効果が見られたという症例報告があり,日本感染症学会が観察研究を始めたところです.現時点では,これらの薬剤は,COVID-19に対する有効性と危険性が検証されるにいたっていません.少々前のめりの議論になってはいないか,心配です.
最近は,FDAが承認する新薬のエビデンスが低下している,EMAが2014-16年に承認した抗がん剤のRCTはエビデンスが乏しいなどという指摘もなされています.期待の大きさも分かりますが,それだけに,エビデンスのないところで先走った判断が行われるのではないか,という心配もあります.
また,もし,これらの薬剤が有効であるとすれば,アクテムラ以外はおそらく感染初期のほうが効果的でしょうから,ハイリスク患者については早期診断・早期入院・早期治療という流れをつくる必要があるでしょう.
日本医師会「新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド(暫定版)」
【追記】
読売新聞「コロナ治療、レムデシビルに一定の効果…日本は5月上旬にも承認」(2020年4月30日)は,次のとおり報じました.
「【ワシントン=船越翔】米国立衛生研究所(NIH)は29日、新型コロナウイルスの感染者を対象とした未承認の抗ウイルス薬「レムデシビル」の臨床試験について、投与した患者の回復が早まるなど、一定の効果がみられたとする中間結果を公表した。
NIHは肺炎を発症した患者約1000人に対し、一方のグループにはレムデシビルを、もう一方には偽薬を投与し、効果を調べている。現時点の分析では、偽薬のグループの患者は回復に平均15日かかったが、レムデシビルのグループは平均11日と短かった。死亡率もレムデシビルのグループの方がわずかに低かった。
レムデシビルは、米製薬会社ギリアド・サイエンシズがエボラ出血熱の治療用に開発した。新型コロナの治療薬としての承認を目指したギリアド社による臨床試験でも、効果を示唆する結果が出ている。一方、中国などの研究グループが29日に英医学誌に公表した臨床試験の結果では、有効性が確認されなかった。
日本政府はレムデシビルについて、海外での承認を前提に特例措置として、新型コロナの治療薬として早ければ5月上旬にも承認する方針だ。」
谷直樹
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