弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最高裁判所長官 ,「憲法記念日を迎えるに当たって」等

最高裁判所長官 大谷直人氏は,2020年5月2日,「憲法記念日を迎えるに当たって」を発表し,事件・文書の受付,DV事件,児童虐待に関する事件,保全手続など緊急性の高い手続は継続して行いつつ,その他の事件については,所在する地域の状況に即して,期日を変更するなど,業務を縮小する措置をとっていることに理解と協力を求めました.「いかなる状況にあっても国民から負託された役割を自覚しつつ,適正な裁判を実現していくことが司法の重要な使命であること」を確認しました.

また,記者会見を行い,談話を発表するとともに,以下のとおり,記者からの質問に応じました。
「感染状況等の各地域の実情,それぞれの事件の性質・内容,迅速な裁判の要請等を踏まえ,さらに感染拡大防止のための運用上の工夫も重ねながら,業務の正常化に向けた検討を行っていかなければならない」,「ある日突然元の状態に戻って,裁判手続をやらせてくださいということではなかなか済まないだろうということは予想されるところで,戻していくための道のりは即座に達成できるものではなく,時間をかけるとすれば,その時間の中でどのような措置を講じていくのかということが,これから問題になってくるのだろうと思います。」と述べました.
「ウェブ会議を利用すると,当事者が,裁判所に出頭するために移動したり,直接会わずに争点整理手続を進めたりすることができることから,今回の感染症拡大のような局面においても有用な面があるというふうに考えているところです。本年度中には,全国の地方裁判所本庁で新たな運用を開始することを予定しており,着実に準備を進めていきたいと思います。」とあらためて積極的な姿勢を示しました.
保釈について「何か1つの事案を前提にしながらこれをどうすべきだという議論の仕方ではなく」と述べました.

■ 令和2年の「憲法記念日を迎えるに当たって」

「日本国憲法の施行から73周年の記念日を迎えました。
 新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっています。各地でこの脅威に対する懸命な戦いが続いており,我が国も,感染症のまん延を食い止めるため,国を挙げた取組のただ中にあります。先般,緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されました。不要不急の外出の自粛,「三つの密」を避けることなど,徹底した措置を講じることが強く求められています。裁判所も,感染拡大防止のために必要な様々な方策の実施に全力で取り組んでいるところであり,業務継続計画に基づき,事件・文書の受付,DV事件,児童虐待に関する事件,保全手続など緊急性の高い手続は継続して行いつつ,その他の事件については,所在する地域の状況に即して,期日を変更するなど,業務を縮小する措置をとっています。裁判手続を利用する国民の皆様にはご不便をおかけしますが,ご理解とご協力をお願いいたします。

 家事の分野においては,今般の事態を受けた社会環境の変化の中で,家庭を巡る状況にも大きな影響が及び,当事者間の葛藤がより深まることにより緊急性の高い事案が生じてくることも懸念されます。家庭裁判所においては,価値観や行動様式の多様化等が進み,解決の難しい案件が増加してきていたところですが,そうした懸念にも細心の注意を払いつつ,早急な対応が必要な事案を遅滞なく適切に解決していくよう取り組んでいく必要があります。
 民事訴訟手続のIT化については,既に,一部の裁判所において,ウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の新たな運用を開始したところです。これとほぼ時期を一にして今般の感染拡大の事態が生じましたが,この間の運用実績を検証し,改善を重ねる中で,今後のIT化の取組に生かしてまいります。

 間もなく施行後11年を迎える裁判員裁判は,広く国民の皆様に参加していただいて初めて成り立つ制度です。感染症に係る現在の情勢下においては,安全かつ安心して裁判に参加できる環境を確保することが不可欠であり,迅速な裁判の要請を踏まえつつ,各裁判体において裁判実施の当否を見極めるとともに,選任手続,審理,評議等の運用上の工夫を進めていく必要があります。

 裁判所は,日本国憲法の下,法の支配を揺るぎないものとすることに努めてまいりました。国民生活に甚大な影響が生じている今回の事態にあっては,緊急時の態勢にとどまらず,今後の事件処理態勢をどのように回復していくかも重要な課題になると思われます。憲法記念日を迎えるに当たり,いかなる状況にあっても国民から負託された役割を自覚しつつ,適正な裁判を実現していくことが司法の重要な使命であることに改めて思いを致し,最善を尽くす所存です。」


「【記者】

 新型コロナウイルスの感染が拡大し,緊急事態宣言が発令される中,最高裁を含め全国の裁判所は,多くの裁判期日を取り消しました。市民が参加する裁判員裁判や国民の関心が高い死刑求刑事件,多数の当事者が原告に名を連ねる大型の民事訴訟が多数含まれており,法的紛争を解決する国家機能が著しく損なわれている状態です。憲法制定とともに独立した司法にとっても,まさに長官がおっしゃったとおり未曾有の事態といえると思います。改めて今回の受け止めと,裁判員裁判をはじめとする各種裁判が再開される条件についてのお考えをお聞かせください。

【長官】

 緊急事態宣言がされたことを受け,感染拡大防止のため,裁判員裁判や当事者が多数となる民事訴訟事件などを含めて多くの裁判について期日の取消等がされていることは,今ご指摘のとおりです。このような状況は,裁判所にとっても前例のない事態であり,新型コロナウイルスの影響は甚大であると受け止めています。
 もとより,裁判所は,このような状況下においても必要とされる業務を行わなければならないことは言うまでもないところですが,他方,国の一機関として,新型コロナウイルス感染症のまん延防止の取組に最大限努力する責務もあると考えており,人の移動と接触をできる限り減らすという観点から,期日の取消等により業務を縮小していることについては,このような緊急事態におけるやむを得ない対応として,国民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと思っています。
 裁判員裁判をはじめとする各種裁判の再開については,時期・態様について画一的に行うことは難しいように思われますので,今ご質問のあった条件についても一概にお答えすることは難しいように思います。感染状況等の各地域の実情,それぞれの事件の性質・内容,迅速な裁判の要請等を踏まえ,さらに感染拡大防止のための運用上の工夫も重ねながら,業務の正常化に向けた検討を行っていかなければならないと考えています。
 いずれにせよ,今後も,状況の変化等を踏まえつつ,利用者の方々や関係者の方々の理解を得ながら適切に対応してまいりたいと思っています。

【記者】

 宣言を受けて,一部の重大な刑事裁判では,被告の勾留が継続したまま公判期日が延期されました。保釈中に海外に逃亡した日産自動車前会長,カルロス・ゴーン被告を巡る事件で,日本の保釈制度の是非が国内外で議論になったのは記憶に新しいところです。裁判所はどのようなスタンスで保釈制度に向き合っているのか,現状に対する認識と今後の展望についてお教えください。

【長官】

 いくつか質問が複合的にされているようですので,順番にご説明します。被告人の身柄拘束が継続している事件の中にも期日の取消等がされているものが今回あるわけですけれども,先ほどから申し上げているように,これらの裁判についても,それぞれの裁判所の地域の実情や事案の性質・内容等を踏まえて,再開の時期を含めた今後の対応が適切に検討されるものと考えています。
 他方で,保釈の判断ということになりますが,これは被告人の身柄拘束に関わる重要な判断であることは言うまでもなく,裁判官の間では,罪証隠滅や逃亡のおそれなどについて,個々の事件の実情に基づいて具体的かつ丁寧に検討すべきであるという議論がなされていると聞いております。こういった議論を積み重ねていくことによって,運用における,一方で「類型化」,他方で「個別化」,こういう2つの側面についての共通認識が一層深まり,それがより適切な運用に結びついていくというふうに思っています。
 今申し上げたことを超えて,保釈のあり方一般について私の所感を述べるということは,個別の事件における裁判官の判断に影響を及ぼす可能性がありますので差し控えたいと思いますが,いずれにせよ,今後も一件一件丁寧に判断されていくべきものであることは言うまでもないというふうに考えています。

【記者】

 民事裁判では,IT化の取組がスタートし,2月からウェブ会議が各地で始まっています。新型コロナウイルスが猛威を振るう中,対面せずに司法手続を迅速に進められる新しい試みをどう生かすべきでしょうか。「世界標準化」を見据えた今後の民事司法改革に対する決意も併せてお聞かせください。

【長官】

 ウェブ会議を活用した争点整理の新たな運用は,本年2月の開始から約3か月が経過したところです。現時点では,新型コロナウイルスという問題が生じているわけですが,これまでに手続を利用した弁護士からは好評を得ているなど,一般的には,順調にスタートが切れたと申し上げることができるのではないかと思っています。
 このウェブ会議を利用すると,当事者が,裁判所に出頭するために移動したり,直接会わずに争点整理手続を進めたりすることができることから,今回の感染症拡大のような局面においても有用な面があるというふうに考えているところです。本年度中には,全国の地方裁判所本庁で新たな運用を開始することを予定しており,着実に準備を進めていきたいと思います。
 また,本年3月10日に公表された「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」の取りまとめの中でも指摘があるとおり,諸外国における裁判手続のIT化の進展状況等に照らすと,我が国において民事訴訟手続のIT化を推進することは喫緊の課題と私自身は思っています。
 裁判所としては,現在進めている民事訴訟手続のIT化なども通じて裁判の質の更なる向上を進めていくことによって,当事者の期待,あるいは時代の要請に応える民事司法制度を実現したいと,このように考えています。

【記者】

 新型コロナウイルスの関係で,司法修習や書記官関係の研修など,人材育成の面でも例年どおりの研修が実施できない状況が続いていますが,このような現状についてのお考えをお聞かせください。例えば,集合修習の代替措置とか,今後の対処のあり方などについてお考えがありましたら,お聞かせいただけますでしょうか。

【長官】

 広く人材育成ということですと大きな問題になってしまうので,まずは司法修習をどうするかというところから申し上げますと,今,修習生が第73期司法修習生になるわけですけれども,全国51か所の実務修習地において,適切な感染防止策をとりながら,裁判官,検察官及び弁護士の実務を学ぶ分野別実務修習をこれまでは行ってきたところです。ただ,緊急事態宣言がされ,外出自粛要請が発せられたことを受けまして,全ての実務修習地において,裁判所,検察庁,弁護士事務所における指導を中断し,司法修習生に課題を与えて自宅学修へ切り替える措置をとりました。今後については,感染状況の推移やあるいは政府の対応等を踏まえて,適切に対応していきたいという段階であるということになります。

【記者】

 刑事関係でお尋ねです。1つは,保釈の話が先ほどもありましたが,端的に言って今回のコロナウイルスの騒ぎを保釈にどう反映するか。刑訴法90条の裁量保釈の要件に当たるかというところだと思うのですが,そのあたりのお考えをお聞かせください。もう1つは,勾留場所についても刑事収容施設の3密の話がされていて,留置場よりも拘置所の方がいいのではないか,そのような配慮ができないかという話が出ていると思います。その2点についてお話しいただければと思います。

【長官】

 保釈の運用に今の状況をどう反映させるかというご質問ですが,先ほども,コロナウイルスの問題が生じるよりも前から,個々の事件について適切に,一つ一つ丁寧に具体的な事案を見ていこうという裁判官の認識が高まっているというお話をしました。まさにそういう前提で保釈の運用を考えていくことが行われているということ,私が申し上げられることは,そのことは適切であるということであり,今の事態を個々の事件の中にどう反映させなければならないかということについては,私が答えるべきご質問ではないのかなというふうに思います。勾留場所についても,そのような議論がされていることは私も知っていますけれども,同様に,それを個々の事件でどう反映させるべきかを長官として申し上げるのは適切ではないということで,お答えを差し控えたいと思います。

【記者】

 長官の談話の中にも,新型コロナウイルスの関連で,今後の事件処理態勢をどういうふうに回復していくかというところが重要な課題になってくるというお話がありました。緊急事態宣言の発令が解かれて裁判を開けるような状況になったとしても,当然市民の方々の感染への不安がすぐに解消されるわけではないと思うのですが,裁判員裁判や一般の方が来庁するような民事裁判をはじめ,どのようなフォローや対策,事件処理態勢が必要か,お考えを詳しくお聞かせいただければと思います。

【長官】

 ご質問にあったように,ある日突然元の状態に戻って,裁判手続をやらせてくださいということではなかなか済まないだろうということは予想されるところで,戻していくための道のりは即座に達成できるものではなく,時間をかけるとすれば,その時間の中でどのような措置を講じていくのかということが,これから問題になってくるのだろうと思います。これまで感染拡大防止措置として裁判所がとってきたものとしては,法廷の中で傍聴者に間隔を空けて着席していただくとか,期日についてはなるべく広い部屋で行う,あるいは電話会議を積極的に活用する,こういった措置がとられてきているわけで,今後回復の方向で動き出すときにも,今のような措置を柔軟に使いながら,当事者の方の不安等をできるだけ解消するような形をとっていく必要があるだろうと思います。裁判員の方々にとっても,無用な不安を負って裁判していただくということは避けなければならないので,きめ細やかな対応というのが必要になってくるというふうに思います。

【記者】

 先ほど保釈の関係で,裁判官の間で具体的かつ丁寧に検討すべきであるという議論がなされていると聞いているとお話しなされましたけれども,例えば保釈の申請から判断までの日数は過去よりも増えてきているのかなど,具体的にいうと,どういう点をもってより丁寧な議論になっているとのご意見なのか,お聞かせいただけますでしょうか。

【長官】

 いろいろな面があると思うのですけれども,個々の事件の実情に基づいて具体的かつ丁寧な検討をすべきだということの議論が深まっている,今までもそういうことについて異論はなかったところですけれども,現在,裁判官の間でそういう認識は深まっているということを申し上げたところです。そういう意味で,「丁寧な」ということについては,当事者双方の意見を具体的に主張してもらって,請求側も相手側もということになるのかもしれませんが,それにより耳を傾けるというような運用も,1つは考えられているのではないかというふうに思いますが,いずれにせよ,それは様々なところを含んでいるのではないかと思います。
 そして,何か1つの事案を前提にしながらこれをどうすべきだという議論の仕方ではなく,先ほども言いましたが,今までのような議論を重ねていると,一方では類型的にこういうものはこうしていった方が良いということと,それからもう一方では,そうはいっても個別の事情としてこういうことを見逃してやっていないかとか,そういうことが議論を重ねていくうちにおのずからより明確になっていくのではないかと,そういうことを申し上げたわけです。

【記者】

 コロナウイルスへの対応として,今後,裁判員裁判を再開していくに当たって今までと全く同じようなやり方でできるのかといえば,そこは難しい面もあると思いますが,例えば選任手続など,こういうふうにやればできるのではないかと何か具体的に検討されていることがあれば,教えていただけますか。また,一部の弁護士会からは,裁判員4人,裁判官1人の合議体で裁判員裁判をやってはどうかという提言も出ていますけれども,この点についてどのようにお考えですか。

【長官】

 最初のご質問については,一般論になってしまうかもしれませんが,結局,選任手続なら選任手続をどのタイミングで行うかを,コロナウイルスに関する状況を見極めながら,適切な時期というのがどの辺なのだろうかということを考えていくのが,まずは第一なのだと思います。その上で,候補者の方も含めて何か不安を持って来られる方がおられれば,その不安がどこにあるのかということを十分お聞きして,裁判所としてできることは対応していく。これまでもそのようなことは行われていたと聞いていますけれども,例えば換気を十分に取って密閉状態ではないようにするとか,環境を整える配慮が必要になるかと思います。
 もう1つの裁判員裁判の合議体に関するご質問については,コロナウイルス感染の事態の中で行使すべきかどうかという議論が今まであったわけではないと思いますが,これからそこを考えていくかどうかはまさに個別の裁判判断なので,結局は先ほど言いましたように,個別の事件について,それぞれの事案に応じてどのように裁判員裁判を再開していくのかということを考える中での検討ということになりますので,私がここで一般的に申し上げるべきことではないかと思います。

【記者】

 裁判員裁判の控訴審で一審判決が破棄されるケースについてお伺いしたいと思います。裁判官裁判時代と比較すれば,破棄率というものは下がっているという側面もあると思うのですけど,他方で裁判員制度開始後に限って見れば,当初抑制的だった一審判決の破棄が近年増加傾向にあるように思えます。中には訴訟手続の誤りなどを指摘して破棄せざるを得ないものもあると思うのですけど,一方で,裁判官や専門家でも判断が分かれるような事件について,裁判員の判断が覆されるというものも最近では少なくないと聞いています。こうした点を踏まえて,裁判員裁判の控訴審について,現在,長官がこのような傾向に対してどのようにお考えになっているのか,また,今後課題となるようなところがあれば,教えてください。

【長官】

 あくまでも一般論として申し上げることになりますが,控訴審の判断というものは第一審の裁判員裁判の運用に大きく影響を及ぼすものであって,そういうことを考えると,控訴審の在り方については,あるべき裁判員裁判像というものの共通認識を一層深めていくことに意義がある,そういうことで,高裁の裁判官同士,それから高裁の裁判官と地裁の裁判官との間で議論を重ね,検討が現に進められていると思っています。
 今お話がありましたように,実際,破棄率というのは裁判員裁判が始まる前と比べると低下しているわけですけれども,私としては,今言ったような取組を継続していくことによって,長い目で見て,一審,二審という審級全体を通じて,国民の視点や感覚と法曹の専門性というものが有機的に結び付いた,より質の高い刑事裁判が安定的に行われるということにつながると思いますので,今行われている取組をもっと深めていくことは,私としては望ましいと思っています。

【記者】

 司法修習の関係でもう少しお聞きしますが,現在自宅学修ということですが,実務修習の再開の見通しは立っているのでしょうか。また,受けられなかった実務修習について,新型コロナウイルスの終息後に代替措置をとるということを検討されているのか,また,任官ですとか弁護士登録というスケジュールがあるかと思いますが,その部分は変わらないという方向で検討されているのかについてお聞かせいただけますでしょうか。

【長官】

 結論からいうと,現時点では緊急事態宣言が行われているところで,これがどうなるかという状況を見ながら,修習生の修習についての今後の方針が決められていくことになるので,今のこの状況の中でどうなのかというご質問には私としてはお答えできません。ただ,現在進行形の修習のことですので,この状況についてきちんと関係者で見据えた上で,適切に対応していかなければならないと思います。」


最高裁が,いかなる状況にあっても国民から負託された役割を自覚しつつ,適正な裁判を実現していくことが司法の重要な使命であることであるという認識をもっていとに安堵しました.
なお,過去の「憲法記念日を迎えるに当たって」は以下のとおりです.これらと読み比べても,今の状況が司法の危機的局面であることがわかります.

■ 令和元年の「憲法記念日を迎えるに当たって」

「日本国憲法は,昭和,平成の時代を経て,この度,令和の時代の始まりとともに,施行から72周年となる記念の日を迎えました。

 その間,裁判所は,日本国憲法の下,法の支配を揺るぎないものとするという使命を果たすために,社会に生起する紛争の適正妥当な解決に努めてきました。平成の時代を振り返りますと,国民により身近で頼りがいのある司法制度を目指して,司法制度改革に伴う諸制度の創設や抜本的な改正が行われましたが,我が国の社会が急速な変化を続ける中で,裁判所の使命は,ますます大きなものとなっています。

 戦後最大の刑事司法の改革として創設された裁判員制度は,間もなく施行10周年を迎えます。国民の理解と協力の下,多くの方々に裁判員として参加していただきましたが,この制度を引き続き順調に運用し,社会に根付かせていくためには,法曹三者が,この10年間の成果に満足することなく,絶えず運用状況を検証し,協力して改善に取り組み続けていくことが重要だと考えています。

 また,民事及び家事の分野でも,社会経済活動の複雑化・国際化,価値観の多様化等が進展するにつれて,深刻な主張の対立をはらむ事件や広く社会の在りようや国民生活に影響を及ぼす事件など解決の難しい案件が増加しており,紛争解決機能の一層の強化が求められています。情報通信技術の進化を背景とする民事裁判手続のIT化等の新たな課題にも着実に取り組み,国民の信頼に応える裁判所を実現するよう努めてまいります。

 憲法記念日を迎えるに当たり,裁判所に託された責務に思いを致し,新たな時代においても司法がその役割を十全に果たしていくために力を尽くす所存です。」


■ 平成30年の「憲法記念日を迎えるに当たって」

 「日本国憲法の施行から71周年となる記念の日を迎えました。

 裁判所には様々な紛争が係属しますが,社会経済情勢の急速な変化や価値観の多様化の進展といった要因は,国民の司法に対する見方やニーズにも多大の影響を与えており,長年築き上げてきた判断の枠組みでは解決の困難な訴訟,これからの社会のあるべき姿に密接に関わる訴訟などが今後も増加することが予想されます。裁判実務の運用面において,先例に安住することなく不断の見直しに努めるとともに,個別事件の裁判に当たっては,多角的な視点から検討して審理を行い,説得性の高い合理的な判断を示すなど,裁判の質を一層向上させていくことが必要です。

 間もなく施行後9年を迎える裁判員裁判は,既に1万件以上の裁判が実施され,6万人を超える方々に裁判員として参加していただきました。法曹三者は,これまでの努力に満足することなく,積み重ねた経験を踏まえて現状の問題点を互いに冷静に分析するなど,より一層国民の理解を得られるような運用の確立に向けた検討を進めていかなければなりません。このほかにも,120年ぶりの債権法改正への対応,新しい刑事司法制度の構築のために導入された諸制度の適切な運用,成年後見制度をより利用しやすいものとするための運用改善,情報通信技術を用いた裁判手続の現代化への対応など,課題は少なくありませんが,それらに着実に取り組む中で,身近な存在として国民から更に信頼される裁判所の実現に向けて努めてまいります。

 さらに,これらの大きな課題はいずれも,日本国憲法の下で法の支配を揺るぎないものとするという裁判所の使命に由来するものということができます。憲法記念日を迎えるに当たり,そのような責務に改めて思いを致し,司法に対する国民の期待に応えるために最善を尽くしていきたいと思っています。」



谷直樹

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by medical-law | 2020-05-03 09:20 | 医療