弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「37度5分以上が4日以上」見直し

厚生労働省は「37度5分以上が4日以上」を見直しました.
保健所の「帰国者・接触者相談センター」窓口の電話対応能力の限界から厳しいこの要件が定められていたところ,急激に悪化して亡くなる症例が複数あり,「37度5分以上が4日以上」では遅い,という批判が相次いだため,見直しとなったものです.
加藤厚労相は「目安ということが、相談とか、あるいは受診の一つの基準のように(とらえられた)。我々から見れば誤解であります」などと発言しましたが,違うと思います.

しかし,根本的な問題は解決されていません.
令和2年1月28日の「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」(令和2年政令第11号)が,そもそもの誤りの発端です.
「指定感染症」に指定されたために,保健所が対応し,感染者を隔離入院させることになります.感染確認者が増えると,隔離入院させる人が増え,病床が不足します。そこで感染確認者を増やしたくない,という流れもあり,そもそも保健所の対応能力の限界から,医師がPCR検査が必要と判断した患者を検査につなげることができないできています.
保健所の「帰国者・接触者相談センター」窓口の電話はつながらず,PCR検査は行われず,発熱者に受診すべき病院を紹介することもできません.
もともと保健所が対応できるレベルの感染症ではないからと思います.
そもそも,新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」の枠組みで,保健所が対応できるレベルのものではない,とすれば,国には補正予算で支援し新型コロナウイルス感染に対応できる体制を再構築する必要があるのではないでししょうか.

また,新型コロナウイルス感染が疑われる患者を受けてくれる医療機関が見つかりにくい事態が生じています.感染症が疑われる患者を受け入れる体制ができていない医療機関が多いためでと思います.

災害対策基本法第六十八条の二は,次のとおり規定しています. 
「市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、自衛隊法第八十三条第一項の規定による要請(次項において「要請」という。)をするよう求めることができる。この場合において、市町村長は、その旨及び当該市町村の地域に係る災害の状況を防衛大臣又はその指定する者に通知することができる。
2 市町村長は、前項の要求ができない場合には、その旨及び当該市町村の地域に係る災害の状況を防衛大臣又はその指定する者に通知することができる。この場合において、当該通知を受けた防衛大臣又はその指定する者は、その事態に照らし特に緊急を要し、要請を待ついとまがないと認められるときは、人命又は財産の保護のため、要請を待たないで、自衛隊法第八条に規定する部隊等を派遣することができる。
3 市町村長は、前二項の通知をしたときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。」

コロナウイルス感染症流行が「災害」であるとすれば,災害対策基本法第六十八条の二に基づき自衛隊の出動を要請できるのです.

自衛隊には兵器としてのウイルスに対する備えがあるはずです.兵器としてのウイルスに対応できるなら,新型コロナウイルスは人工的に創られてたものではないのですから,兵器としてのウイルスより制御しやすいはずで,自衛隊なら十分対応できるはずです.新型コロナウイルスとの戦争状態にある,と考えてもよいくらいだと思います.保健所レベルではなく,防衛省と厚生労働省が全力をあげて対応すべきウイルスではないか,と思います.
防衛医科大学校医学科は約80名の卒業生を出しています.防衛医科大学校卒業生の医官・看護官・薬剤官に活躍をお願いできないか,と思います.自衛隊病院は8つあります.
実際,世田谷区の自衛隊中央病院では,新型コロナウイルス感染患者を受け入れていますが,院内感染を起こすことのない体制がとられています.補正予算で医療にかける費用を増やし公的な病院を中心に感染症指定医療機関を増やし感染症が疑われる患者を受け入れる体制を創る必要があるのではないでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2020-05-09 16:28 | 医療