弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連,改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明

日弁連は,2020年5月11日,「改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明」を発表し,改正法により内閣ないし法務大臣の裁量により役職延長や勤務延長が行われることにより、検察の独立性が侵害されることの危惧を表明しました.

「当連合会は、本年4月6日付けで「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」を公表し、検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対した。

検察庁法改正法案によれば、内閣ないし法務大臣が、第9条第3項ないし第6項、第10条第2項、第22条第2項、第3項、第5項ないし第8項に基づき、裁量で63歳の役職定年の延長、65歳以降の勤務延長を行い、検察官人事に強く介入できることとなる。

当連合会は、検察官の65歳までの定年延長や役職定年の設定自体について反対するものではないが、内閣ないし法務大臣の裁量により役職延長や勤務延長が行われることにより、不偏不党を貫いた職務遂行が求められる検察の独立性が侵害されることを強く危惧する。「準司法官」である検察官の政治的中立性が脅かされれば、憲法の基本原則である三権分立を揺るがすおそれさえあり、到底看過できない。少なくとも当該法案部分は削除されるべきである。

しかしながら、政府及び与党は、誠に遺憾なことに、検察庁法改正法案を国家公務員法改正との一括法案とした上で衆議院内閣委員会に付託し、法務委員会との連合審査とすることすらなく、性急に審議を進めようとしている。5月7日に開催された内閣委員会理事懇談会の結果からすると、まさに近日中に開催予定の内閣委員会において本法案の採決にまで至る可能性もある。そもそも、検察庁法の改正に緊急性など全くない。今般の新型インフルエンザ等対策特別措置法上の緊急事態宣言が継続する中、かくも重大な問題性を孕んだ本法案について、わずか数時間の議論だけで成立を急ぐ理由など皆無である。

当連合会は、改めて当該法案部分に反対するとともに、拙速な審議を行うことに強く抗議する。」

検察庁法改正法案は、内閣の裁量つまり恣意で,63歳の役職定年の延長、65歳以降の勤務延長を行い、検察官人事に強く介入できるようにするものです.そこが問題です.

加藤清隆氏は,きゃりーぱみゅはみゅ氏に対し「歌手やってて、知らないかも知れないけど、検察庁法改正案は国家公務員の定年を65歳で揃えるため。安倍政権の言いなりになるみたいな陰謀論が幅をきかせているけど、内閣が検察庁を直接指揮することなどできません。デタラメな噂に騙されないようにね。歌、頑張って下さい。」と述べましたが,内閣に検察官の定年を延長するかしないか個々の人ごとに裁量が与えられますので,時の内閣に忖度する人物の定年を延長することができます。直接指揮する必要などまったくありません.
一律65歳で定年なら問題は生じませんが,裁量を与えていることが問題なのです.

谷直樹

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by medical-law | 2020-05-12 04:02 | 司法