弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

《瓢鮎図》

《瓢鮎図》_b0206085_14444926.jpg

《瓢鮎図》(ひょうねんず)は,画僧如拙氏(生年没年不明)の水墨画です.

「如拙」は,老子第四十五章からとっています.
大成若缺 其用不弊
大盈若沖 其用不窮
大直若詘 大巧若拙 大辯若訥 
躁勝寒 靜勝熱
清靜爲天下正

大巧若拙(大巧は拙のごとし)とは,下手に見えて本当はうまい,という意味でしょうか.

《瓢鮎図》は国宝です.
風景は清く静かです.瓢箪をもった男と鮎(なまず)の対峙は一見山水画的ではありません.

小林秀雄氏は,「如拙の瓢鮎図といふ有名な絵がある。妙な感じの現れた面白い絵である。瓢は、勿論、瓢箪だが、鮎は鯰といふ字ださうで、成る程見ると、小川のほとりに男が立ち、両腕をたくし上げて瓢箪を持ち、川の中の鯰を睨んでゐる。支那人に違ひないが、頭に三角帽を載せた妙な男で、乞食坊主なのか暇な百姓なのか、無学な私には、まるで素性がわからない。讃にも捉へられたらお慰みと書いてあるから、川の中の鯰を、瓢箪で捉へようとしてゐるらしいが、瓢箪の酒を、鯰に飲ませようとしてゐる風にも見える。鯰もをかしい。鯰髭ではなくて、ちよび髭で、その代り無暗と大きい鰭があり、川の中にゐるどころか、それで空中を飛んでゐる様に見える。要するに見れば見るほど変てこな処が、瓢箪なまずの傑作とでも言ふのであらうか、如拙といふのも、不得要領な人物ださうで、日本人らしいが、支那人だといふ説もあるさうだが、画面の風光はいかにも日本人らしい哀愁を湛へてゐる様に感じられる。川の流れ具合も優しいし、若竹も葦も繊細で美しい」と書いています.

将軍足利義持氏はインテリで,「鮎魚竹竿に上る」(苦労して成功するの意)の言葉をふまえ,瓢箪で鮎を押さえる方法を禅増らに問いました.政治は瓢箪で鮎を押さえるように難しい,と感じ,専門家会議に諮問してみた,というところでしょうか.上に禅増らの回答が書かれ,下に如拙氏の画が描かれています.将軍のぼやきにユーモアで返した,それが《瓢鮎図》なのでしょう.足利義持氏は,《瓢鮎図》を屏風にしたて身近に置いていたとのことです.
《瓢鮎図》は,妙心寺塔頭退蔵院の所蔵です.
だいぶ前になりますが,退蔵院に複製を見に行ったことがあります.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ



by medical-law | 2020-05-18 04:29 | 趣味