弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京弁護士会,東京出入国在留管理局の収容施設内における新型コロナウイルス感染症の発生に関し、全件収容主義の是正とともに仮放免の徹底を求める会長声明

東京弁護士会は,2020年8月18日,「東京出入国在留管理局の収容施設内における新型コロナウイルス感染症の発生に関し、全件収容主義の是正とともに仮放免の徹底を求める会長声明」を発表しました.

「当会は、本年5月28日、「新型コロナウイルス感染対策としての仮放免に伴う生活支援と全件収容主義の是正を求める会長声明」を発出し、「外国人の人身の自由の保障の観点から全件収容主義は速やかに是正されなければならない」ことを改めて強調するとともに、「仮放免に際しては、当該地域ごとに住居の提供、就労の許可を講じることなどの施策を実施して、仮放免に伴う適切な生活支援を行うべきである」ことを指摘した。
しかし、その後約2か月半が経過したが、感染防止対策としての仮放免の活用は十分に行われず、本年8月7日現在、東京出入国在留管理局(以下「東京入管」という。)においては、なお180人もの収容が継続している。加えて、仮放免を許可された外国人の就労をはじめとする生活支援も不十分なままである。
そのような中で、本年7月下旬以降、東京入管職員に複数の新型コロナウイルス感染者が相次いで判明した。そして、8月7日には、被収容者の感染発生という恐れていた事態が現実化してしまった。
法務省では入管施設感染防止タスクフォースにより、「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」(以下「対策マニュアル」という。)が策定され、新型コロナウイルス感染症対策として、仮放免を活用することで、被収容者の密を避けることを予定していた。入管施設内でのこれ以上の感染拡大を防止し、被収容者の生命、身体の安全を守るため、すでに判明した感染者の濃厚接触者とは判断されない被収容者については、同対策マニュアルに定められた通り、積極的に仮放免を実施すべきである。同時に仮放免後の感染防止や医療確保にも十分な配慮をする必要がある。
また、同対策マニュアルが定める感染症防止措置と、発生後の事後対応として接触防止・二次感染防止措置等を実施し、他の被収容者、職員その他関係者との接触の有無、診断に至った経緯、感染経路、消毒等の感染判明に伴って講じた措置、これまでの感染防止策、今後の対応など感染状況の調査とその公表によって職員及び被収容者各人の感染リスクの有無を明らかにするべきである。
当会は、全件収容主義の是正を重ねて求めてきたところであるが、新型コロナウイルス感染症対策としても、被収容者の仮放免及び生活支援のさらなる実施を求める。」
毎日新聞「入管収容者で初の感染確認 現在も隔離 クラスター化懸念 東京」(2020年8月7日)は次のとおり報じました.

「東京出入国在留管理局(東京都港区)に収容されている外国人男性1人が、新型コロナウイルスに感染していると同入管が7日、明らかにした。全国の入管施設に収容されている外国人で、新型コロナ感染が判明したのは初めて。東京入管には、難民申請中を含めて滞在資格を失った外国人約200人が収容されており、クラスター化が懸念される。

 東京入管によると、この男性は50代で昨年6月27日に収容された。国籍はプライバシーを理由に開示していない。8月5日に頭痛と悪寒を訴え、入管で体温を計測したところ、一時39度の発熱を確認。同日、外部の医療機関を受診してPCR検査を行い、7日に陽性と判明したという。

 5日に病院から戻ったこの男性は、7日現在もなお同施設内で隔離収容されているという。この男性のいた収容区画で生活していた外国人は約20人で、東京入管は「医師ら専門家のアドバイスのもと、感染拡大防止を図っている」と説明している。

 感染ルートは調査中だが、東京入管では前日の6日に発表された20代の職員2人を含め、これまでに4人の職員の感染が判明している。職員からの感染可能性について「感染が判明した4人は、外国人と直接接触する部署ではない。また、今回感染がわかった外国人と直接接触している職員に体調不良者はいない」と説明している。

 日本弁護士連合会は、入管施設が「3密」の状態にあるとして、感染拡大を防ぐため、解放が可能な収容者については速やかに収容を解くことを求める会長声明を4月に出している。

 東京入管では、施設内の外国人に感染が発生した可能性を7日朝に収容者に伝達。収容者の一人のアジア系の女性は7日、毎日新聞に対し、「施設内の消毒が十分にされているかも分からず、自分も感染するのではないかと恐怖を感じている。居室から出ることや面会を制限され、不安でたまらない」と話した。【井田純】 」


入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル第2版」参照

マニュアルは作成するだけで,実行しない,というのは問題でしょう.
本来,収容施設は密なのですから,収容者及び職員全員についてPCR検査を行い,新型コロナウイルス陽性者を医療施設に隔離収容すべきと思います.陰性の収容者は解放し,陰性の職員はリモート勤務にすべきと思います.
不要不急の収容を行っていること自体が問題です.

沖縄タイムス「逮捕された男、留置場でコロナ感染 那覇署員ら30人自宅待機か」(2020年8月18日)は,次のとおり報じました.

「沖縄県警は17日、那覇署の留置場で勾留されている50代の男が新型コロナウイルスに感染したと発表した。留置場で勾留されている容疑者の感染確認は県内初。県警関係者によると、同署の留置課に所属する署員ら約30人が濃厚接触の可能性があるとして、自宅待機しているとみられる。県警本部の警察官を同署に応援で派遣し、留置業務を行うことも検討しているという。
 県警によると、男は7月中旬に逮捕され、県内の別の警察署で勾留されていた。8月7日に那覇署へ移送。17日に38・5度の高熱の症状が出たため、那覇市内の医療機関で抗原検査をしたところ、陽性と判明した。男は入院する予定という。
 県警によると、男の取り調べを担当した警察官や留置課の署員らが自宅待機している。17日現在、男の勾留業務などに関わった警察官や、他の勾留されている容疑者の中で体調不良を訴えている人はいない。
 県警は今後、濃厚接触の可能性がある警察官らにPCR検査実施も検討している。県警は17日、同署内や警察車両を消毒した。」



この時期,不要不急の逮捕は控えるべきでしょう.
取り調べは,完全リモートで行うか,密にならないようにアクリル板越しに行うほうがよいと思います.
感染は拡大する一方ですから,警察の機能が麻痺しないように,留置場の職員も,距離をおき,密を避け,接触しないようにすべきでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2020-08-19 23:24 | 人権