弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医療安全情報No.165,アラートが機能しなかったことによるアレルギーがある薬剤の投与

公益財団法人 日本医療機能評価機構は,2020年8月17日,「医療安全情報No.165アラートが機能しなかったことによるアレルギーがある薬剤の投与」を発しました.
「処方時にアラートが表示される条件に合った方法で電子カルテにアレルギー情報を登録していなかったことにより、アレルギーがある薬剤を投与した事例が9件報告され て い ま す( 集 計 期 間:2015年1月1日 ~2020年6月 3 0 日 )」とのことです.

「事 例 1
当院の電子カルテは、アレルギー情報を登録する際、薬剤名をリストから選択すると同じ成分の薬剤の処方時にアラートが表示されるが、テキスト入力するとアラートが表示されない仕組みである。
看護師Aはアレルギー情報の登録に慣れておらず、院内のルールを知らなかったため、「クラビット」とテキスト入力した。
医師がレボフロキサシン錠を処方した際、アラートは表示されなかった。
レボフロキサシン錠が薬剤部より払い出され、看護師Bが患者に渡した。
内服1時間後、患者に呼吸困難感と眼瞼浮腫などの症状が出現した。

事 例 2
当院の電子カルテは、アレルギー情報にペニシリン系の薬剤を1剤選択して登録すると、処方の際、院内採用のすべてのペニシリン系の薬剤にアラートが表示される仕組みである。
通常は薬剤を検索して登録するが、医師は「ペニシリン、ケフラール」とテキスト入力した。
手術後、医師は患者がペニシリン系の薬剤にアレルギーがあることを失念していた。スルバシリン静注用を処方した際、アラートは表示されなかった。
投与開始後、患者が上肢の痺れと息苦しさを訴えたため投与を中止した。」


対応策は次の3点が示されています.
「・処方時にアラートが表示される登録方法を周知する。
・テキスト入力(フリー入力)で登録すると処方時にアラートが表示されないことを注意喚起する。
・患者のアレルギー情報は、処方時にアラートが表示される方法で登録する。」


アラートシステムがどのような入力方法にも対応していればよいのですが,現状ではフリー入力では機能しないなどのアラートシステムの限界を知って使うことが必要で,事故防止のため不慣れな人にも徹底することを期待します.

谷直樹

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by medical-law | 2020-08-22 06:44 | 医療事故・医療裁判