弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

那覇地裁令和2年8月27日判決,車いすの女性研修医の転倒に前ボタンを留めずに白衣を着用してすれ違った同僚男性医師の注意義務違反認め県などに約5250万円の賠償命じる(報道)

沖縄タイムス「医師の白衣が引っ掛かり車いす転倒、頚髄を損傷 那覇地裁が賠償命令「県立病院の配慮不十分」」(2020年8月28日)は,次のとおり報じました.

「2012年7月、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センターに研修医として勤務していた車いすの40代女性医師が、病院内で男性医師とすれ違った際に転倒し、頚(けい)髄損傷の後遺障害が悪化したとして男性医師や県に損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、那覇地裁であった。平山馨裁判長は原告側の請求を大筋認め、県などに約5200万円の支払いを命じた。

 判決によると女性は06年10月の交通事故で障がいを負い、車いすで生活するようになった。その後、同病院に研修医として勤務。男性医師が通行中、前ボタンを留めずに着用していた白衣の一部が車いすに引っ掛かり、女性は右後方に転倒した。女性は事故後、握力の低下など介護が必要なほど体の自由が利かなくなったという。

 平山裁判長は、男性医師が故意に車いすを倒そうとした可能性はないとした上で「車いす利用者が多い病院の医療従事者として、不慮の事故が発生することのないよう安全を確保する注意義務がある」などと過失を認定。県は使用者責任や安全配慮義務を負うとした。被告側は女性が自ら招いた事故などと主張したが退けられた。」


琉球新報「車いす転倒で障害悪化 研修医へ5250万円賠償、県に命令 那覇地裁判決」(2020年8月29日)は次のとおり報じました.

「2014年7月、沖縄県立南部医療センター・こども医療センターに勤務していた車いすの40代の女性研修医が、勤務時の転倒事故で脊髄損傷の後遺障害が悪化したとして、県などに損害賠償を求めていた訴訟の判決公判が27日に那覇地裁(平山馨裁判長)であった。平山裁判長は原告の請求を一部認め、県などに約5250万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は06年10月、交通事故で脊髄損傷の障害を負い車いすが必要になった。09年2月ごろから同病院で勤務を始めたが、14年7月に同僚の男性医師とすれ違った際に車いすごと転倒。

 その後、事故による後遺障害が悪化したとの診断を受けた。

 女性は、男性医師から「故意または過失による利益侵害」にあたる不法行為を受けたとして約525万円、県に男性医師の使用者責任や安全配慮義務違反があったとして約6700万円の支払いを求めていた。

 平山裁判長は、女性が負った後遺障害について「事故と相当因果関係のある損害であると認めるべきである」と判示した。」

上記報道の件は私が担当したものではありません.
転倒の原因について,車椅子を使って長い女性研修医が自ら転倒するとはあまり考えにくいですし,男性医師が故意に転倒させるとも考えにくいのです.
沖縄の夏は暑いので,男性医師は前ボタンを留めずに白衣を着用していたのでしょうが,日常的に車椅子の人とすれ違う病院内で,そのような着用のしかたは問題があると考えられます.裁判所が男性医師の注意義務違反を認定したのは分かります.
また,事故と相当因果関係のある損害として約5250万円を認めた点は参考になります.

谷直樹

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by medical-law | 2020-09-02 02:05 | 医療事故・医療裁判