弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連、日本政府に対し、核兵器禁止条約について早期に署名・批准することを要望する会長声明

日弁連は、2020年11月6日、「日本政府に対し、核兵器禁止条約について早期に署名・批准することを要望する会長声明」を発表しました.

「2017年7月7日、史上初めて核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons:TPNW)(以下「本条約」という。)が国連加盟国のほぼ3分の2となる122か国・地域の賛成を得て採択された。
その後、本年10月24日にホンジュラスが批准したことで、批准国(加入国を含む。)が本条約の発効に必要な50か国・地域に達し、本条約は、そこから90日後の2021年1月22日に発効することとなった。
本条約は前文と20か条で構成され、その前文においては、核兵器が二度と使用されないよう保証するための唯一の方法は、核兵器の完全な廃絶であるとし、被ばく者(hibakusha)及び核実験の被害者の苦痛に留意し、核兵器の法的拘束力のある禁止こそ、核兵器のない世界の達成及び維持に向けた重要な貢献となるとしている。その上で、本条約の締約国は、この目的に向けて行動することを決意すると宣言している。


1945年8月の広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、日本の被ばく者による「核兵器のない世界」を希求する声の原点であった。

当連合会も、広島市で開催された第1回定期総会(1950年5月12日)において、「地上から戦争の害悪を根絶し、(中略)平和な世界の実現を期する」と宣言して以来、繰り返し核兵器廃絶に向けた意見表明を行い、条約の草案を国連に提起するなどの各種活動も行ってきた。また、本条約に関しても、「『核兵器禁止条約』の早期実現を求める会長声明」(2017年6月6日)及び「『核兵器禁止条約』の採択に関する会長声明」(同年7月10日)を公表し、日本政府が、原子爆弾の投下による被害を受けた唯一の被爆国として、自ら積極的な役割を果たすことを強く期待してきたところである。

しかし、国連事務総長が「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」(本年9月26日)に寄せるメッセージで指摘したように「核兵器保有国間の関係は分断と不信、対話の欠如という様相」を呈している。同事務総長が「核戦争に対する貴重なブレーキ」と呼んだ中距離核戦力(INF)全廃条約は2019年8月に失効しており、今後、延期された2020年核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議において、同条約と本条約の関係について丁寧な議論が必要とされる重要な局面を迎えている。

世界には、約1万3000発の核兵器が依然として現存し、その9割を保有する米国とロシアの核兵器廃絶に向けた真摯な対話こそ欠くことのできないものである。少なくとも、2021年2月に期限が切れる予定の、米国とロシアの間の軍縮枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)の延長は必要であり、その上で核兵器削減と核兵器廃絶に向けた対話を粘り強く行う必要がある。

原子爆弾の悲惨な経験は、日本国憲法第9条の戦争放棄・軍備不保持条項へと連なり、さらには、下田事件判決(東京地裁1963年12月7日判決)では、原子爆弾の投下は国際法違反とされた。そして、被ばく者自身の「核兵器のない世界」の希求の声は、本条約における世界中の「hibakusha」の声につながっている。

日本政府は、世界の核保有国と本条約賛成国との橋渡しの役割を果たすとして、本条約について、署名も批准もしていない。しかし、今こそ、日本政府はその態度を改め、本条約前文がうたう人道の諸原則を守るための役割を自ら担うべきであり、まずは本条約発効後の締約国会議にオブザーバーとして参加すべきである。

そして、当連合会は、本条約が発効することを大いに歓迎し、日本政府に対し、「核も戦争もない世界」を目指すその立場を内外に明らかにし、本条約について早期に署名・批准することを改めて要望する。」

日本政府は米国の傘にあるのでこの条約に署名・批准しないという考えですが、そのような考えについての検討、批判がほしいところです.

谷直樹

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by medical-law | 2020-11-07 10:48 | 弁護士会