県立病院で急性腹症のレントゲン写真の読影を誤り消化管穿孔を見逃し患者死亡
「昨年5月、診療上の判断の誤りによる治療の遅れに起因し、患者様が亡くなられるという医療事故が発生致しました。病院及び全職員は、亡くなられた患者様のご冥福をお祈りするとともに、御家族・関係者様に対し心よりお詫び申し上げます。
今後、全職員が一丸となって再発防止に努め、安心安全な医療の提供をとおして、県民の信頼回復に努めてまいる所存です。なお、御家族様の了承のもと、ここに公表させていただきます。
1 事案の概要
令和元年5月 嘔気・嘔吐を訴え、当院受診。翌日、嘔気・嘔吐・下痢症状が続くため、再受診。いずれも腹部所見、血液所見などから、感染性胃腸炎の診断で点滴・内服治療後、帰宅とした。
3日目 嘔吐・下痢はやや緩和されるも、強い右側腹部痛が出現したため再度受診。腹部レントゲンを施行するも所見の読影判断を誤り、入院加療の必要はないと判断し、帰宅を指示。
4日目未明 容態が悪化し救急外来受診。腹部CTにて消化管穿孔が疑われ緊急手術(十二指腸穿孔に対する修復、ドレナージ術)を施行。
術後2日目 集中治療の甲斐無く容態の改善を得られず、消化管穿孔にもとづく敗血症性ショックと多臓器不全により死亡されました。
2 事案の問題点
強い右側腹部痛に対して行った腹部レントゲン写真の読影判断を誤ったため、結果として、腹部痛の原因をさらに検索し治療につなげる、CTなどの検査を行えなかったこと。
連日の受診の経過の中で、直近には急性腹症を否定できないほどの強い腹部痛が生じていたにもかかわらず、同症状及びその他の症状、所見等を多職種間で共有することができず、救急診療や入院加療を提示できなかったこと。
診療科内、診療科間、多職種間並びに一般・救急外来間の連携など、チーム医療が十分ではなかったこと。
3 再発防止策
病院、全職員が一丸となり、以下の再発防止の取り組みを徹底してまいります。
医師の誤判断防止や治療方針決定のための診療科内及び診療科間の協力体制、多職種間(医師-看護師及び技師)の連携体制など、常に患者様を第一に考える立場に立って、各職種間で相互に意見や評価を尊重することのできる関係性を絶えず追求しつつ、チーム医療の確認と強化を図る。
容態の悪い患者様に適切に対応できる一般・救急外来間の確実な連携システムへの改善、並びに院内急変対応システム(Rapid Response System)の積極的な発動につながる運用の見直し。
全職員、特に個々の医師をはじめとする医療職における事案の徹底的な振り返りと、診療に対する意識改革。
診療(診断)技術、医療安全、伝達・接遇・判断力などを、常に向上させるための、勉強会・講習会などの開催。」
県がミスを認めて謝罪し、遺族に慰謝料など計4300万円を支払うことで裁判外で和解することで合意した,と報じられています.
私は,現在,消化管穿孔の裁判を2件担当していますが,上記の件は,私が担当したものではありません.
消化管穿孔症例におけるミスは重大な結果につながりますので,注意義務に反することのないよう適切な診療がとくに必要とされます.
「感染性胃腸炎の診断」は,重大な疾患を除外してから行うべきものです.
谷直樹
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