弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

市民病院の医療ミス死亡2件,肺がんの疑いを伝えず半年治療が遅れる,心筋梗塞の可能性が高かったのに必要な検査を怠る

共同通信「医療ミスで患者2人死亡 愛知・小牧市民病院」(2020年11月25日)は
次のとおり報じました.

「愛知県の小牧市民病院は25日までに、同病院で患者2人に対し医療ミスがあったと認め、遺族に賠償金計約3千万円を支払うと明らかにした。同病院によると、40代男性は肺がん治療の開始が約半年遅れ、70代男性は心筋梗塞の可能性が高かったにもかかわらず帰宅させられ、いずれも死亡した。
谷口健次院長は「安心して医療を受けてもらえるよう再発防止に努める」とのコメントを出した。

40代男性は2017年1月にエックス線検査を受け、肺がんの疑いがあると診断されたが、担当の医師は結果を伝えず、呼吸器内科を受診するよう案内するのも忘れた。男性は胸の痛みを訴え、約半年後に再び来院し、進行性の肺がんと診断された。男性は19年2月に死亡した。
70代男性は18年2月、胸の苦しみを訴え救急搬送されたが、医師の指示で帰宅。翌日、自宅で死亡した。心筋梗塞の可能性が高かったのに必要な検査を怠ったと結論付けた。」


NHK「小牧市民病院で賠償金支払いへ」(2020年11月24日)は次のとおり報じました. 

「3年前、愛知県小牧市の小牧市民病院で医師が肺がんの疑いがある所見を見落としたことでその後、患者の治療が遅れ死亡したとして、小牧市は患者の遺族に2500万円あまりの損害賠償金を支払うことを決めました。

小牧市民病院によりますと3年前の1月、愛知県内に住む40代の男性が主治医である整形外科医の指示で折れた鎖骨のレントゲン撮影をしたところ、男性の肺に影が写っていました。
この影についてレントゲン写真を見た呼吸器内科の医師は「肺がんの疑いがある」とシステムに所見を入力しましたが整形外科医の男性医師はこの所見を見落としていたということです。
半年後、男性は胸の苦しみを訴えCTなどを受けたところ進行した肺がんと診断され、治療を受けましたが去年死亡しました。
男性の遺族は去年、名古屋簡易裁判所に民事調停を起こしていて、小牧市は「必要な対応を失念していた本院に過失がある」として医療ミスをみとめ、また「就労可能期間による逸失利益がある」として、遺族に損害賠償金2500万円余りを支払うことを決めました。
小牧市は11月開かれる議会に損害賠償の議案を提出し可決され次第、支払うことにしています。
小牧市民病院の谷口健次院長は「ご遺族に心からお詫びします。安心して医療を受けられるよう再発防止に努めます」とコメントしています。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
医師間の連携ミス等により肺がんの治療が半年,1年遅れた例は,医療過誤としては少なくありません.眼の見落としについては,因果関係が問題になります.つまり,見落としがなければ,どのような結果になったか,の立証が問題になります.治療したという仮定のもとで,その経過,その結果を立証するのはハードルが高いのですが,かといって因果関係がないことを前提に賠償額を算定するというものいかがなものかと思います.報道の肺がんの件は,逸失利益が認められた解決ができ,参考になります.
不安定狭心症と急性心筋梗塞は連続する疾患で,まとめて急性冠症候群とよばれます.その見逃し事案も医療過誤事件の典型ですが,賠償額は過失立証,因果関係立証の程度によります.

谷直樹

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by medical-law | 2020-11-26 22:57 | 医療事故・医療裁判