弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋高裁金沢支部令和2年12月16H判決,違法な身体拘束によりエコノミー症候群を発症して死亡した事案で約3500万円の賠償を命じる(報道)

NHK「精神科の拘束で死亡 控訴審は病院側に賠償命じる逆転判決 石川」(2020年12月16日)は次のとおり報じました.

「石川県の精神科の病院に入院していた40歳の男性が、体をベッドに拘束されたあとエコノミークラス症候群を発症して死亡し、男性の両親が病院側を訴えた裁判で、名古屋高等裁判所金沢支部は「ほかの方法がなかったとも言えない」として、1審とは逆に、病院側におよそ3500万円の賠償を命じました。

4年前の平成28年、睡眠不足や心身の不調を訴えて石川県内の精神科の病院に入院した大畠一也さん(当時40)が、6日間ベッドに拘束されたあとエコノミークラス症候群を発症して死亡し、大畠さんの両親が病院を運営する社会福祉法人「金沢市民生協会」に賠償を求める裁判を起こしました。

1審の金沢地方裁判所は「拘束を認めた医師の判断には合理性があった」などとして訴えを退け、両親が控訴していました。

16日の2審の判決で、名古屋高等裁判所金沢支部の蓮井俊治裁判長は「死亡した男性は薬も拒否せず服用しており、一時的に人員を割くなど医療行為を行うためのほかの方法がなかったとも言えない。身体拘束を認めた医師の判断は早すぎた」と指摘しました。

そのうえで、1審とは逆に、病院側におよそ3500万円の賠償を命じました。
男性の両親「身体拘束なくして」
判決のあと男性の両親が金沢市内で記者会見し、父親は「1審の判決はよく考えず出されていたのだと、改めて怒りも感じた。あれほど優しかった息子が縛られていたことを思うと許せない。精神医療の身体拘束はなくしてほしい」と話していました。
病院側「厳粛に受け止めます」
判決を受けて男性が入院していた石川県野々市市の精神科病院「ときわ病院」を運営する社会福祉法人「金沢市民生協会」は「裁判の結果を厳粛に受け止めます。判決の詳しい内容を確認し、今後の対応について協議します」とコメントしています。
増える身体拘束 死亡する事例も
「身体拘束」は患者の自傷行為やほかの患者に危害を加える行為を予防するための一時的な医療措置です。

全国の精神科病棟で「身体拘束」を受ける患者は増えていて、「国立精神・神経医療研究センター」によりますと、おととし6月の時点で1万1362人と、平成15年6月の5109人と比べて2倍以上になっています。

患者が拘束中やその直後にエコノミークラス症候群を発症するなどして死亡する事例も起きていて、精神医療をめぐる問題に詳しく今回の裁判で原告側を支援してきた杏林大学の長谷川利夫教授によりますと、平成25年以降、全国で12件の死亡例を把握しているということです。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
一般論ですが,地裁判決が正当と思われないときは,積極的に控訴したほうがよいと思います.
谷直樹

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by medical-law | 2020-12-28 17:15 | 医療事故・医療裁判