弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

がん研究会有明病院が「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に規定された手順に対する不適合事案の調査結果と再発防止策を発表

公益財団法人がん研究会有明病院は,2021年1月14日,「当院で実施した臨床研究における「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」への 不適合発生に関するご報告ならびに再発防止について」を発表しました.

 「2018年に当院で開始した臨床研究において、患者さんへの研究参加協力のための説明および同意取得(インフォームド・コンセント)の過程で「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以下、「倫理指針)」に規定された手順に対する不適合(以下、「本事案」)があることが確認されました。
 当該の臨床研究は、患者さんの通常診療における検査採血時に、一度だけ研究のための血液を併せて提供いただき、がん組織由来のDNA等を解析するという観察研究であり、研究を目的とした薬剤の投与や手術を行うもの(介入研究)ではありませんでした。また、採血による健康被害の発生は認められませんでした。
 しかしながら、本事案は倫理指針に定義された「不適合の程度が重大であり厚生労働大臣への報告を要する」に該当し、当該研究の中止が妥当であると倫理審査委員会にて判断されました。これを受け、慎重に事実関係の調査を行い、当該の不適合が発生した原因、並びに対策につき検討を行って参りました。

 この度、調査結果と再発防止策について報告書として取りまとめ、厚生労働大臣に報告いたしました。また、当該の研究にご協力をいただいた患者さんへの、本事案に関するご説明と謝罪を同時に取り進め、本日現在、連絡が可能な患者さんへの対応が大略終了いたしました。

 本事案におきまして、患者さん、関係する皆様方にご心配をお掛けしましたことを、謹んでお詫び申し上げます。
 当院は今回の事態を厳粛に受け止め、信頼の回復に向け、再発防止のため研究実施体制の整備や業務手順・研究者への教育の見直しを実施し、法令・倫理指針等を遵守した適正な研究実施に取り組んで参る所存でありますことをご報告いたします。」



「A医長らは 当該の研究計画書や研究用採血・検査オーダーの手順につき、D部長から詳細な情報の提供があったにも関わらず、その内容につき十分な確認をしていなかった。その結果、A医長らは、D部長から示された手順から離れて研究用採血・検査オーダーを行い、自らCPMセンターに持ちこむことで症例登録に着手した。」というところに起因するようです.

「同意取得ができなかった症例が発生した理由」については次のとおり書かれています.
「消化器化学療法科A医長は、2018年9月より 患者の登録を開始した。ちょうどこの頃、 消化器化学療法科の研究支援を担当していた研究助手が個人的事情により5日/週から2日/週の勤務へ変更となった。その ため、 候補患者 のスクリーニング、登録症例数のカウント、説明文書の準備等の事前準備について、研究助手の支援を十分に受けられなくな った。そこでA医長は、同じ消化器化学療法科のB医師の協力などを得ながら、研究者だけで研究を遂行することにした。本来であれば、あらかじめ候補となる患者スクリーニングを行い、候補患者に研究参加協力のための事前の同意 説明を 行ったうえで、次回来院時に同意取得を行い、研究用採血・検査をオーダーする手はず であった。しかしながら、候補患者の事前スクリーニングが十分にできず、化学療法のための入院予約リストから候補者を選ぶこととし、同意取得を前提に、事前に入院時採血に合わせて研究用採血のオーダーを行う等の事例が発生した。採血時間に合わせて当日に同意説明をしようとしたが、多忙な外来診療の中では、事前の説明文書の準備や説明の時間を割くことが困難であ った。このため、採血後の同意取得となるケースや、A医長が急患などの対応のため 事後の 同意取得 の機会さえ逸するケースが出てきた。本研究期間中、事後の説明を含め説明を行った患者すべてが、A医長およびB医師に対し研究参加の同意に協力的であったことも、A医長らが 不適切な行動を継続させてしまう一因となった。」


谷直樹

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by medical-law | 2021-01-15 14:53 | コンプライアンス