弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院でCT検査において肺癌を見落とした医療事故発生

公立大学法人福島県立医科大学附属病院は,「CT検査において肺癌を見落とした医療事故の発生について」をそのサイトに掲載しました.

「1 患者様

  70歳代男性

2 事故の概要

 令和2年2月、患者様は持病の慢性疾患の検査としてCT検査を施行されました。放射線診断医が作成したCT検査報告書には、腹部には異常がないことが記載され、胸部に関しては右肺の下部に浸潤影(*1)が指摘されていましたが、CTの依頼医は適切な対応をとりませんでした。また、肺門部(*2)付近にも結節影(*3)がありましたが、CT検査報告書には記載されておらず、依頼医も気づきませんでした。
 同年11月末、患者様は体調不良にて本院を受診し、検査したところ脳梗塞が判明したため本院へ入院しました。
 同年12月上旬、さらに検査を進めたところ、2月に見落とされた結節影は進行肺癌であることが判明しました。また、脳梗塞は肺癌に関連するものと考えられました。
 現在、引き続き治療中であります。

(*1)淡い不規則な陰影。
(*2)気管支に近い部位。
(*3)比較的均質な陰影。  

3 事故発生原因

(1)肺門部の結節はCT検査報告書に記載されておらず、CTの依頼医も気づきませんでした。
(2)放射線診断医が作成したCT検査報告書に記載された右肺下部の浸潤影について、依頼医は適切な対応をしませんでした。

4 再発防止策

(1)CT検査報告書の作成にあたっては、現在も一部はダブルチェックを行っていますが、さらに強化して見落としを防ぐ体制を整備します。
(2)CTの依頼医は検査報告書を十分確認し、注意すべき所見に対して適切に対応することを改めて周知・徹底します。
(3)検査報告書に記載された注意すべき所見に対して、依頼医が適切に対応しているか、病院として確認する体制を構築します。」


この件は私が担当したものではありません.
CTでは肺門部の病変が見にくいことがありますが,肺門部肺癌は,ハイリスク群に対する気管支鏡検査で発見可能なはずです.
この件は,肺門部に結節影があり右肺の下部に浸潤影があったというのですから,見落としは明らかでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2021-02-09 13:13 | 医療事故・医療裁判