弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京地判,永久ペースメーカに早期に変更していれば死亡を避けることができた可能性があったとして約495万円の賠償を命じる

共同通信「医療ミスで死亡、賠償命令 東京地裁」(2021年2月21日)は次のとおり報じました.

「独立行政法人・地域医療機能推進機構(東京都)が運営する都内の病院に入院した女性が死亡したのは、医療ミスが原因だとして、遺族3人が同機構などに約3900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は21日までに計495万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は2013年5月、うっ血性心不全などで緊急搬送され入院。緊急用として体外に設置する「一時的ペースメーカー」を挿入して治療を続けたが、7月に死亡した。
桃崎剛裁判長は、担当医らが、体内に埋め込む「永久ペースメーカー」に早期に変更していれば、死亡を避けることができ、生存していた可能性があるとし、担当医らの注意義務違反を認めた。」


判決の認定は,因果関係について相当程度の可能性だったのでしょう.
永久ペースメーカを使用していれば,回避できた可能性の程度の立証の問題になりますが,一時的ペースメーカ〔temporary pacemaker〕は,永久ペースメーカに劣るという報告があります.

ちなみに,東京地判平16年2月2日は,全くペースメーカを用いなかった事案で,「被告Eは,Cに対し,10月17日の初診後,ペースメーカーの植込みを速やかに行うべきであり,仮にペースメーカー植込み手術を速やかに行わない(行うことができない事情がある)場合には,これを行うまでの間の暫定的措置として一時的ペースメーカーの使用又は薬剤投与による治療を開始すべきであったといえる。そして,前記前提事実3(2)に弁論の全趣旨を併せると,被告病院においては,11月4日以前にペースメーカー植込み手術を施行することが可能であったし,手術施行までの間,一時的ペースメーカーの使用又は薬剤投与による治療を行うことにも何ら障害はなかったと認められる。しかるに,被告Eは,手術予定日を初診日から17日後である11月4日とし,11月3日までCの完全房室ブロックに対して上記のいずれの処置もとらなかったのであり,この点において被告Eに過失(診療上の注意義務違反)があるというべきである。」「証拠(甲B16,17,28,29,証人I)によれば,Cについて,10月17日の初診後,速やかにペースメーカーの植込み又は一時的ペースメーカーの使用若しくは薬剤投与が行われていれば,その心室細動の発症を予防することができたと認められる。」と判示しています.


谷直樹

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by medical-law | 2021-02-22 13:59 | 医療事故・医療裁判