弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

岡山弁護士会,選択的夫婦別姓の早期の法制化を求める会長声明

岡山弁護士会は令和3年4月5日「選択的夫婦別姓の早期の法制化を求める会長声明」を発表しました.

「さる3月19日,岡山県議会において,選択的夫婦別姓の法制化に反対する意見書が採択された。2011年以降,このような意見書が,地方議会で採択された例はなく,マスコミにおいても全国的に報道されている。しかも,意見書採択に賛成した自民党の県議からは一人の賛成討論もなかった。

 今回の意見書は,選択的夫婦別姓を認めると家族の一体感を失わせる,親子で違う姓を名乗ることが子どもの福祉に悪影響を与えるなどを法制化への反対理由としている。しかし,比較法的にも日本のような夫婦同姓制度を採用する国家は稀であり,夫婦別姓を採用する圧倒的多数の国において家族の一体感がない,子どもの福祉に悪影響があるとの立法事実はない。

 逆に,現行の夫婦同姓の強制は,意に反して姓を強制されない人格権(憲法13条)を侵害している。また,96%は女性である妻が夫の姓を名乗っていること(2016年度厚労省人口動態統計)からすると,結局は結婚によって妻が夫の姓を名乗ることを事実上強制するものとなっており,法の下の平等(憲法14条)にも違反する。さらには,婚姻が両者の合意のみによって成立するとした婚姻の自由(憲法24条)の侵害でもある。一方,選択的夫婦別姓制度では,夫婦同姓も選択できるのであるから,夫婦ともに同姓を望む者の利益も害されない。

 1996年に法制審議会は,選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが,未だに法制化は実現していない。これに対し,近年の世論調査では,選択的夫婦別姓を是とする意見が多数を占めており,しかもその比率は徐々に増している(2018年内閣府世論調査,早稲田大学棚村政行教授調査など)。また,民法の夫婦同姓制度の合憲性が争われた2015年12月16日最高裁大法廷判決でも,多数意見は現在の民法を合憲としたが,憲法24条に違反するとの理由で5名の裁判官の反対意見があり,今後の判例変更が十分にありうる論点である。今や選択的夫婦別姓法制化は大きな時代の流れとなっている。

 にもかかわらず,今回,岡山県議会がこのような意見書を採択したことは,時代の大きな流れに逆行するものと言わざるを得ない。岡山弁護士会は,選択的夫婦別姓の法制化に賛成である。この問題についての岡山県民の理解が進み,選択的夫婦別姓の法制化が早期に実現することを強く望むものである。」


ちなみに日弁連は平成14年4月20日に「選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案の今国会上程を求める会長声明」を発表しています.

「法制審議会は、1996年2月、選択的夫婦別姓制度導入等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申したが、6年以上経過した今も、この答申に基づく民法改正案は国会に上程されていない。
内閣府は、昨年8月4日、「家族法に関する世論調査」の結果を発表した。この調査結果によれば、選択的夫婦別姓制度について、改正に賛成が42.1%、反対29.9%、「通称使用を認める」が23%であった。特に20代、30代では、制度導入賛成と通称使用容認を合わせると82%以上になる。
当連合会は従来、選択的夫婦別姓制度の導入について、速やかに民法改正案を国会に上程し、広く国民の間の議論とすべきことを訴えてきたが、上記世論調査の結果からは、既に世論も民法の改正を指向していることが明らかである。
現行民法は、結婚にあたり夫婦同姓を強制して、どちらかが結婚前の姓を改めなければならない。その結果、夫の姓を称する夫婦が圧倒的に多く、妻の姓は夫の姓と平等に尊重されているとはいえない。
日本国憲法は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本とし、1985年に日本が批准した女性差別撤廃条約は、姓(氏)及び職業選択を含めて、夫及び妻に同一の個人的権利を保障することを締約国に求めている。諸外国をみても、夫婦別姓を選択できる国が大多数であり、夫婦同姓を強制している国は、先進国の中では日本だけである。
選択的夫婦別姓制度は、夫婦が望む場合は別姓も認めようという選択の制度に過ぎず、21世紀の男女共同参画社会の実現を担う若い世代の中では選択的夫婦別姓制度の導入を待ち望んでいる人々が数多くいる。価値観・生き方の多様化している現在、別姓を望む夫婦にまで同姓を強制する理由はない。別姓も選択できる制度を導入して、個人の尊厳と平等を保障するべきである。
ところで、政府与党内に、女性の職業上の不利益回避のためなら戸籍法を改正して旧姓を通称として認めればよいとする案もあるようである。しかし、このような案では、個人が2つの姓を持つこととなり、社会的・経済的に混乱が予想される。また、混乱を防ぐために旧姓しか使用できないとするのであれば、社会的には選択的夫婦別姓制度と変わらず、なぜ戸籍上の同姓強制に固執するのか疑問である。
我が国も、夫婦別姓の選択を可能とすることにより、多様な生き方を認める成熟した社会をめざす必要がある。
よって、当連合会は、政府与党に対し、今国会において、速やかに上記民法改正案を上程し、選択的夫婦別姓制度の導入を実現することを強く求める。」



谷直樹

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by medical-law | 2021-04-09 07:57 | 弁護士会