弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東地判令和3年4月30日,カルテ改ざん認め,説明義務違反と失明の間の因果関係を認め,大学病院に約960万円の支払いを命じる

時事通信「医師のカルテ改ざん認定 東京女子医大に960万円の賠償命令―東京地裁」(2021年04月30日)は次のとおり報じました.

「○○医科大・○医療センター(東京都○○区)で白内障手術を受けた後に左目を失明した坪井昇さん(88)が、医師が事前説明を怠りカルテも改ざんしたとして、約2880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。桃崎剛裁判長は改ざんを認め、説明義務違反もあったなどとして同大に約960万円の支払いを命じた。

 賠償額のうち、100万円は改ざんによる慰謝料。坪井さんの代理人弁護士によると、カルテの改ざんを認めて慰謝料の支払いを命じる判決は異例という。
 判決によると、坪井さんは2004年に左目の白内障が確認され、13年11月と12月、同センターの担当医が手術したが視力は回復せず、失明した。
 桃崎裁判長は、13年11月の手術での出血が原因で眼圧が上昇し、失明に至ったと指摘。担当医が作成したカルテには、もともと手術が難しい症状があり、その説明もしたとする記述があったが、手術記録と整合せず「カルテの改ざんに該当する」と判断した。また、眼圧の数値も実際より低く改ざんしたと認定した。
 さらに、手術せずに経過観察する選択をしても急激な視力低下や失明が生じないことを説明する義務を果たさなかったとし、「説明義務違反と失明の間には因果関係が認められる」と結論付けた。
 判決言い渡し後、記者会見した坪井さんは「言い分を聞いてもらい、非常にうれしい。目が見えなくなるのは悲劇だ」と語った。
 ○○医科大広報室は「カルテへの虚偽記載があったとの判断は謙虚に受け止め、学内への指導を徹底する」とコメントした。」


朝日新聞「失明した手術のカルテ改ざん ○○医大に賠償命令」(2021年4月30日)は次のとおり報じました.
 
「○○医大○医療センター(東京都○○区)で、白内障の手術を受けて失明した男性が病院側に約2900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。桃崎剛裁判長は、手術のリスクを事前に十分説明しなかったうえ、カルテを改ざんしたと認定し、約1千万円の支払いを命じた。

 原告の坪井昇さん(88)は2013年11~12月、両目の白内障手術を3回受けた後に左目を失明した。

 判決は担当医師について、手術は高いリスクを伴うが必ずしも視力の改善は保証されず、手術しなくてもすぐに失明することはないという事前説明をしなかったと認定。「説明義務を果たしていれば原告は手術に同意せず、手術は実施されず失明することはなかった」と指摘した。

 さらに手術記録や看護記録と照合し、カルテの改ざんも認めた。目の一部組織が元々断裂していたなどという記載は事実と違う内容を追記したもので、術後の眼圧についても後で上からなぞって正常値に近い数値に修正したと指摘。「改ざんが発覚しなければ医師の責任が否定されたかもしれず、悪質だ」と批判した。

 坪井さんは判決後の会見で「目が見えなくなったのは悲劇。私のような人がこれ以上出ないようにしてほしい」と語った。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
説明義務違反と結果との因果関係を認定した数少ない判決例の一つです.説明義務違反は少額の賠償という安易ともいえる流れに棹をさした判決です.
また,カルテの改ざんを認めた判決は私ももらったことがありましたが,数は少なく,貴重です.

谷直樹

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by medical-law | 2021-05-06 20:07 | 医療事故・医療裁判