「性と生殖に関する健康と権利」(Sexual and Reproductive Health and Rights:SRHR)」
「性と生殖に関する健康と権利」(Sexual and Reproductive Health and Rights:SRHR)」に関する報告書の提出が予定されています.
Sexual Healthは,自分の「性」に関することについて,心身ともに満たされて幸せを感じられ,またその状態を社会的にも認められていることを意味します.
Reproductive Healthは,妊娠したい人,妊娠したくない人,産む・産まないに興味も関心もない人,アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず,心身ともに満たされ健康でいられることを意味します.
Sexual Rightsとは,セクシュアリティ(性)を自分で決められる権利,つまり,自分の愛する人,自分のプライバシー,自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利を意味します.
Reproductive Rightsは,産むか産まないか,いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利,つまり妊娠,出産,中絶について十分な情報を得られ,「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利を意味します.
1992年に,WHOは,リプロダクティブ・ヘルスを定義しました.
1994年に,国際人口・開発会議(ICPD)は,「カイロ行動計画」の中でSRHRを提唱しました.これが,人口政策の観点からの議論を,個人の人権からの組立へ転換させることとなりました.
現在では,SRHRは国際的に承認され,具体的な人権となっています.
「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」,目標5「ジェンダー平等を実現しよう」及び目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」がSRHRに関連します.
とくに,ターゲット5.6「国際人口開発会議(ICPD)の行動計画及び(世界女性会議)の北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利(SRHR)への普遍的アクセスを確保する」参照.
日本でも,残念ながら,SRHRを尊重,保護,履行する義務に反する事態が起きており,複数の裁判が起きています.SRHRについて裁判所が理解を深めてほしいと思います.
なお,SRHRの観点からすると,出生主義も反出生主義も容易に優生思想に結びつきやすく人権侵害の危険がある,と言えるでしょう.子どもを産む(出生主義),産まない(反出生主義)について,個人の考えを超えて,それを他者に求める,押しつける,政策とすることになれば,明らかに人権侵害です.
染色体異常等の出生前診断は,妊娠,出産,中絶について十分な情報を得られ,「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利から肯定できます.
wrongful birth 訴訟は,生まれてきた子ども自身が苦渋に満ちた人生が損害であるとして損害賠償を求める訴訟です.子どもの権利という形をとっていますが,Reproductive Rightsに反すると思います.子どものために産むな,と言うのは,子どものためにポテトサラダを手作りせよ,と言うのと或る意味同じ発想ではないでしょうか.
谷直樹
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