弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新型コロナウイルス感染症に関連した事例(医療事故情報収集等事業第64回報告書より)

公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業第64回報告書(2020年10月~12月)」に「新型コロナウイルス感染症に関連した事例」が掲載されています.

新型コロナウイルス感染症の患者(疑い含む)の治療中に発生した事例25件のうち,新型コロナウイルス感染症への感染対策が影響した事例が12件、感染対策には関連せず患者の治療・看護の過程において発生した事例が13件であったとのことです.

前者の内訳は,「コロナウイルス感染症の患者(疑い含む)に対応するため、医師や看護師が個人用防護具(PPE)の着用等の感染防止策を講じていたことが影響したと記載されていた事例が4件、感染者に対応するための手術室や検査室の準備に時間がかかり、予定よりも開始が遅れた事例が3件報告されていた。また、新型コロナウイルス感染症専用病棟等での慣れない治療・看護により発生した事例が3件であった。その他の事例は、骨折の手術後の患者が新型コロナウイルス感染症の疑いとなり、抗体検査の結果待ちのために安静臥床が4日間続き、深部静脈血栓症・肺塞栓症を発症した事例などであった。」とのことです.

後者は,「新型コロナウイルス感染症の患者の治療や看護にあたる際、感染リスクがあるため、患者対応の時間を短くしたことにより観察が不足した可能性や、病棟の再編などの不慣れな環境下でコミュニケーションが不足した可能性がある。」とのことで,「治療の過程でチューブ等が抜けた事例、薬剤の処方時に患者や投与方法を間違えた事例など様々な事例が報告されていた。」とのことです.

当該患者は感染していないが、新型コロナウイルス感染症への対応を目的としたルール・手順の導入や変更により発生した事例が24件あり,「面会・付き添い制限が影響した事例が10件と多く、そのうち6件は、面会が制限されたことによるストレスにより自殺企図に至った事例であった。次いで院内の環境を変更したことによる患者の転倒・転落の事例が5件であった。」とのことです.

者は新型コロナウイルスに感染しておらず、またルール・手順の導入や変更にも関連しない事例が7件ありました.患者は普段は家族と一緒に移動していましたが,新型コロナウイルス感染症の影響を恐れて、一人で自家用車に向かって転倒した事例,新型コロナウイルスの感染が怖く、手すりを持たずに杖をついてエスカレータに乗り,バランスを崩して転落した事例が紹介されています.

谷直樹

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by medical-law | 2021-05-22 18:07 | 医療事故・医療裁判