弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「カテーテルアブレーションに係る死亡事例の分析」

一般社団法人 日本医療安全調査機構医療事故調査・支援センターは,2021年7月28日,「医療事故の再発防止に向けた提言 第14号 カテーテルアブレーションに係る死亡事例の分析」を公表しました.

「・18 例中11 例は、心タンポナーデが生じていた。
・18 例中14 例は、治療開始から24 時間以内に心停止となり、そのうち6 例は、24 時間以内に死亡していた。」

【チームでのカテーテルアブレーションの安全確保】
提言 1 カテーテルアブレーションは、心筋組織に直接損傷を加える治療であり、心タンポナーデ発生時などには短時間で致命的な状態となる。危機的な合併症のサインを見逃さないために、循環器科医師をはじめとしたカテーテルアブレーションに関わる多職種でチームを構築し、迅速に対応することが重要である。

【適応の判断とリスク評価・IC】
提言 2 カテーテルアブレーションは、合併症の可能性を常にはらんでいる。基礎心疾患などの患者背景により合併症の重症度が大きく異なるため、術式による発生リスクを考慮して患者個別に適応の検討を行い、患者・家族とリスクを共有する。
【鎮痛と鎮静に伴うリスク】
提言 3 鎮痛・鎮静による循環動態変動が回復してからカテーテルアブレーション操作を開始する。その後も血圧低下などに対して速やかな対応をとるために、バイタルサインを絶え間なく監視する医療従事者を配置する。

【操作中のリスク管理】
提言 4 カテーテルアブレーションは、血管内・心腔内でカテーテル操作を行う治療法であり、心タンポナーデや空気塞栓など致死的合併症が起こりうることを認識する。患者の血圧低下や心拍数の変化など循環動態が変動した際には、その原因を検索するために操作を中断する。

【出血の早期発見】
提言 5 カテーテル室退室前には、心臓超音波検査などにより心嚢液貯留状態の確認を行う。退室後も、継続的なバイタルサインの観察が重要であり、異常を認めた場合は心臓超音波検査や血液検査などを迅速に行う。また、異常がなくても計画的に検査を実施する体制の構築が望ましい。

【出血への対応】
提言 6 不安定な循環動態が心嚢液貯留やその増加によると考えられる場合には、少量でも心嚢穿刺を実施する。
循環動態が改善しない場合、PCPS などでの循環補助、外科的治療を実施する。

【遅発性合併症についての認識】
提言 7 カテーテルアブレーション治療後は、退院後も左房食道瘻や遅発性心タンポナーデなどの合併症が発生し致命的となりうることを認識し、患者および通院している医療機関へ情報提供を行うことが望ましい。」


18の事例の概要も掲載されています.上記の提言に即した対処ができていれば死亡は回避されたのではないか,と考えられる事例もあります.上記提言により事故の再発が防止されることを期待します.

谷直樹

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by medical-law | 2021-07-30 00:05 | 医療事故・医療裁判