弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

ワクチンとADE(抗体依存性免疫増強)

ワクチン接種を受けた人が変異株に感染した場合中途半端なワクチンの効果により重症化するおそれがあるのではないか,と言われています.
ワクチン接種が広がることで,ADE(antibody-dependent enhancement,抗体依存性免疫増強)のリスクが心配されています.

厚生労働省の「新型コロナウイルスQ&A」には次の記載があります.

Q ワクチンを接種した人が変異ウイルスに感染すると重症化しやすい(抗体依存性感染増強(ADE)になりやすい)のは本当ですか。
A 現在までに、新型コロナワクチンを接種した方で抗体依存性感染増強(ADE)が生じたという報告はありません。


質問と答えが対応していません.ワクチンを接種した人が変異ウイルスに感染すると重症化しやすいのか否か,明確に答えて」いません.
A の最後に 「今後も、新たな変異型が出現した場合には、ワクチンを接種した人でADEが生じるかを観察する必要はありますが、現時点ではADEの懸念はないと考えられます。」と記載しています.
新たな変異型が出現した場合にはADEの懸念がないと言えないというように読めます.

抗体に結合したウイルスが抗体を利用して食細胞に感染すると,食細胞の働きにより重症化することは知られています.新型コロナウイルス以外のウイルスでは報告があります.これはワクチンの作用が弱いときに起きるので,ワクチンの効果が薄れてきたとき,あるいは変異型ウイルスに感染したときADEが生じる可能性が考えられます.

大阪大微生物病研究所の荒瀬尚教授らのグループは,デルタ株に特定の変異が四つ加わるとワクチンの効き目が大幅に弱まる恐れがあると発表しました.
世界保健機関は8月31日にミュー株を「注意すべき変異株」に指定しましたが,ミュー株については不明な点が多いです.
共同通信「自宅待機、10日間に短縮へ 政府、コロナ水際対策緩和を調整」(2021年9月8日)は「政府は新型コロナウイルスの水際対策として帰国者や入国者に求めていた自宅待機期間を、現行の14日間から10日間に短縮する方向で調整に入った。早ければ今月末にも適用する。」と報じました.
ミュー株等の変異株が国内に入ってくることでADEのリスクが高まるのですから,短縮は感染拡大のみならずADEのリスクを高めることになると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2021-09-09 05:25 | 医療