人工透析治療中止による死亡で意思確認不十分を認め訴訟上の和解(報道)
「○○病院」(東京都○○市)で人工透析治療を中止した腎臓病患者の女性=当時(44)=が死亡し、遺族が同病院を運営する福生病院企業団に慰謝料など2200万円の損害賠償を求めた訴訟は5日、東京地裁(桃崎剛裁判長)で和解が成立した。
和解条項は「患者に対する説明や意思確認で病院側に不十分な点があった」とし、遺族に解決金を支払うことなどが盛り込まれた。
原告代理人弁護士によると、和解条項は病院側が今後、同様のケースで患者に適切な説明を行い、医療方針などを変更できると十分伝えるとともに、病状の変化に応じて意思確認するよう努めることを約束。一方、病院の医師が女性に積極的に透析中止を提案したことは認められないとした。」
NHK「○○病院 人工透析中止訴訟で和解成立 東京地裁」(2021年10月5日)は 次のとおり報じました.
「3年前、東京の○○病院で人工透析を中止された女性が死亡した問題をめぐり遺族が病院側に損害賠償を求めていた裁判で、5日、和解が成立しました。
和解の条件には、病院側が医療の提供に当たって適切な説明を行うことや、医療方針について患者や家族の意思確認に努めることが盛り込まれました。
平成30年8月、東京 ○○市にある○○病院で、腎臓病を患っていた当時44歳の女性の人工透析が中止され、1週間後に死亡しました。
女性の夫と息子は、女性が当時、人工透析を中止する同意書にいったん署名したあと、「撤回したい」と看護師に伝えたにもかかわらず、透析が再開されなかったとして、病院を運営する法人に対し2200万円の賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしていました。
遺族側の弁護団によりますと、裁判所が「透析の中止を医師が積極的に提案して死に誘導したとはいえないが、患者への説明や意思確認に不十分な点があった」として和解を勧告し、5日、双方が合意したということです。
和解条項には、病院側が今後も医療の提供にあたって適切な説明を行うことや、医療方針について患者や家族の意思確認に努めることなどが盛り込まれました。
弁護団の冠木克彦団長は「命に関わる治療では慎重な対応が必要だという重要なメッセージになる」と評価しています。
また、女性の夫は「医療従事者は患者のことばに耳を傾けて話をよく聞いてほしい。命の尊さをいま一度考え、同じようなことが起きないようにしてほしい」としています。
○○病院「記録に不十分な面があった」
和解について○○病院は「患者に対して『死の選択肢』である透析中止を提案したという一部報道があったが、そのような事実がないことが確認されました。他方で、記録に不十分な面があったことからこの点も踏まえ遺族との円満な解決に至りました。今後も東京都の指導事項などを順守し、地域医療に貢献して参ります。改めて故人のご冥福をお祈りします」とコメントしています。」
朝日新聞「透析中止で患者死亡、病院と遺族が和解 裁判長『病院の説明不十分』」は次のとおり報じました.
「○○病院(東京都○○市)で2018年、腎臓病患者の女性(当時44)が人工透析の治療をやめたあとに死亡した問題で、遺族が病院側に慰謝料を求めた訴訟は5日、東京地裁で和解が成立した。桃崎剛裁判長は和解条項で「透析中止は患者の生死に関わる重大な意思決定で、病院側の説明や意思確認が不十分だった」と批判した。
一方で、「病院側が透析中止を提案して死を誘導したとは認められない」とも説明した。和解条項はほかに(1)病院側が解決金を支払う(2)再発防止として患者が意思決定後も病状変化に応じて病院側が意思を確認する――など。
女性は当時、医師と相談して人工透析治療の中止を承諾したものの、呼吸の苦しさなどから数日後に治療中止の撤回を申し出た。だが治療は再開されなかった。遺族はこの日、「患者がどんな状態でも言葉に耳をかたむけてほしい」とコメントした。(新屋絵理)」
上記報道の件は私が担当したものではありません.
人工透析中止の判断は死の選択にも等しく,重いものですから慎重になされるべきですし,またいつでも撤回できることを説明すべきです.
患者に対する説明や意思確認で病院側に不十分な点があったことを認めさせたのは大きいと思います.
谷直樹
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