大学病院で生検針で肋間動脈を損傷し死亡(報道)
「先月、佐賀大学医学部附属病院で、患者の70代の男性が、腫瘍の検査中に動脈を損傷して死亡する医療事故が起きていたことがわかりました。
病院は遺族に謝罪するとともに、男性が死亡した経緯などを外部の調査機関で詳しく検証することにしています。
佐賀大学医学部附属病院の山下秀一院長は15日、記者会見で医療事故を公表し、「患者とご家族に多大な苦痛をお与えし、県民のみなさんの信頼を損ね、深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。
病院によりますと、先月、肝臓に腫瘍がある70代の男性患者に対して、ろっ骨の間から検査用の針を通す処置を行ったところ、4時間後に血圧が低下するなど男性の容体が悪化しました。
男性は、針を通したろっ骨の間の動脈を損傷して、体内で出血を起こしていて、いったんは止血に成功しましたが、その後も出血がみつかり翌日、死亡しました。
担当した2人の医師は、検査のあと、エコーや血液検査によって男性の体調を確認していましたが、容体が悪化するまで出血に気づけなかったということです。
また、その後の調査で、男性と家族に対して、まれに死亡する例があることを検査の同意書に記していた一方、口頭での説明を怠っていたこともわかりました。
病院は、事故を起こしたことと、リスクの説明が不十分だったことを遺族に謝罪し、医療事故を専門に扱う外部の調査機関に届け出て、男性が死亡した経緯や検査の方法などを詳しく検証することにしています。」
佐賀新聞「佐賀大附属病院で医療事故 検査時に動脈損傷し死亡」(2021年10月16)は次のとおり報じました.
「佐賀大医学部附属病院(山下秀一病院長)は15日、肝腫瘍の検査時に動脈を傷つける医療事故が9月に起き、入院中の70代男性が死亡したと発表した。検査前の説明が不十分だったとして家族に謝罪した。第三者機関の医療事故調査・支援センターに届けるとともに、調査委員会を設置し原因究明にあたる。
病院によると、検査は肝臓に針を刺して組織を採取する「生検」で、20例以上の経験がある医師2人があたった。通常の道具を使い、終了時にはエコーで出血がないことを確認した。4時間後から発熱や血圧低下があったため検査、肋骨(ろっこつ)の間の動脈の損傷と出血を確認した。すぐに輸血を始め、集中治療室(ICU)で昇圧剤などの治療を続けたが、21時間後に亡くなった。
同病院医療安全管理室(木村晋也室長)などで状況を調べ、肝腫瘍生検に起因する死亡であることを確認した。生検の説明同意文章には「死亡は千人に一人程度の報告です」と記載しているが、担当医師が患者とその家族には説明していなかったことが分かった。
肝腫瘍生検に関しては、医療事故調査・支援センターに2015年10月~19年7月までに1102例中、10例の死亡事故が報告されている。同病院では毎年約80例実施しているが、事故の原因調査のため、現在は休止している。
同病院では今後、外部委員を交えた調査委員会を設置し、原因や過失の有無を検証し、再発防止策を策定する。山下病院長は「患者と家族に大変な苦痛を与えたことを深くおわびする。原因を究明し同様の事例が発生しないよう努力する」と話した。(石黒孝)」
上記報道の件は私が取り扱ったものではありません.
生検による肋間動脈損傷は,手技の問題より,事前のリスク説明と事故後の出血探索がポイントとなることが多いように思います.
谷直樹
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