弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

松山地裁令和3年10月28日判決,看護師が心電図モニター監視怠った事案で市に慰謝料約220万円の支払いを命じる(報道)

NHK「「病院がモニター監視怠った」○○市に賠償命令」(2021年10月28日)は次のとおり報じました.

「8年前、市立○○病院で入院中に死亡した男性の遺族が起こした裁判で、松山地方裁判所は「看護師らが心電図モニターの監視を怠った」と病院側の責任を認め、慰謝料として200万円あまりを支払うよう○○市に命じました。
この裁判は、平成25年7月、市立○○病院で心臓の手術を受けて入院していた男性が死亡したことについて、男性の遺族が「夜間の看護師らが心電図モニターの監視を怠り放置した」と訴えて、病院を運営する宇和島市などに賠償を求めていたものです。
28日の判決で、松山地方裁判所の阿閉正則裁判長は、「男性は術後、3日しか経過しておらず、病院は心電図モニターを定期的に監視するなどして、異常がないか確認する義務を怠った」と指摘して、病院側の責任を認めました。
そのうえで「男性は致死性の不整脈で突然、死亡したと考えられる。看護師らが監視を怠っていなければ命を救えたとはいえないが、定期的に異常がないか確認していれば速やかに適切な治療が行われた可能性があった」として、死亡した男性の精神的苦痛に対する慰謝料として男性の遺族4人に200万円あまりを支払うよう宇和島市に命じました。
判決について市立宇和島病院は、「今後、判決文の内容を精査して対応していきたい」としています。」


テレビ愛媛「心電図のアラームを3時間放置 市立○○病院に入院中に死亡 市に遺族への賠償命令判決【愛媛】」(2021年10月28日)は次のとおり報じました.

「市立○○病院で入院中の男性が死亡したのは監視義務を怠ったためなどとして、遺族らが損害賠償などを求めていた裁判で、松山地裁は○○市に約220万円の支払いを命じました。
訴えを起こしていたのは、2013年に市立○○病院で入院中に死亡した当時60代の男性の遺族らです。
心電図のアラームが鳴ったまま約3時間放置するなど監視義務を怠ったとして、○○市に約4600万円の損害賠償を求めていました。
松山地裁の阿閉正則裁判長は判決で「心電図モニターを定期的に監視する義務を怠ったものの、救命の可能性は30%程度だった」と判断。
監視義務違反と死亡の因果関係はなかったとした一方、生存した可能性を相当程度侵害したと認め、宇和島市に約220万円の支払いを命じました。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
看護師らが心電図モニターの監視を怠らなかったら致死性の不整脈による死亡が回避できた高度の蓋然性を認めず(因果関係を否定し),相当程度の可能性を根拠に看護師らが心電図モニターの監視を怠ったことの慰謝料を認めた判決です.
相当程度の可能性でも金額には幅がありますが,救命の可能性が30%あること,3時間も放置したことからすると,約220万円というのはどうなのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2021-10-28 22:38 | 医療事故・医療裁判