弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

千葉大学医学部附属病院 ,良性病変に対する不必要な手術に関するご報告とお詫び

千葉大学医学部附属病院は,令和3 年10 月29 日 ,「良性病変に対する不必要な手術に関するご報告とお詫び」をそのサイトに掲載しました.

「千葉大学医学部附属病院(以下「当院」という)において、良性病変に対する不必要な手術を行った事例が発生しました。
患者様とご家族には多大なご負担とご心痛をおかけし、心よりお詫び申し上げます。このたび、患者様との示談が成立し、公表についてもご了解をいただきましたので、診療の経過及び今後の再発防止策について公表いたします。当院では、この事実を大変重く受止め、再発防止に取り組んでいるところです。

1. 患者様 : 50 代女性

2. 疾患名 : ひだり上外側部乳癌

3. 実施された手術 : 両側の乳房切除

4. 本件の概要

本件は2017 年9 月、当院の医師が週1 回勤務していたA 病院において、「ひだり乳房」に乳癌が見つかった患者様を当院に紹介して以降、担当医として2 つの医療機関にまたがり単独で全ての診療過程を担っていた中で発生した事案であり、概要は下記の通りである。

① 9 月:当院の医師は、A 病院で診察した患者様の「ひだり乳房」に乳癌が見つかったため当院への紹介状を作成し、以後、当院でも担当医として診療することとした。
② 10 月:画像検査で「みぎ乳房」にも検査が必要と判断し、A 病院で組織検査を実施した。結果は「悪性所見なし」であったが、担当医はその病理報告書の確認を怠った。
③ A 病院において「みぎ乳房」の検査結果を患者様に説明する際、担当医は悪性所見のある「ひだり乳房」の病理報告書を「みぎ乳房」のものと誤認し、「両側乳癌」と診断したうえで手術の準備を進めた。
④ 術前に行うこととなっている当院病理部での組織検査の再診断を依頼する際に、「ひだり乳房」の病理標本を「みぎ乳房」の病理標本と思い込んで提出した。
⑤ 12 月:当院において、本来「悪性所見なし」の「みぎ乳房」を含む両側を切除する手術を実施した。その後、手術摘出検体の病理検査で誤認が判明したものである。

<経緯の詳細>
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9 月1 日 A 病院 担当医は患者様の「ひだり乳房」の組織検査を行った。 担当医の認識 ひだり乳癌疑い
9 月15 日 A 病院 【ひだり乳房の組織検査結果説明】検査結果は乳癌であった。 担当医は患者様に結果を説明し、当院で精査・治療を行うため紹介状を作成した。担当医の認識 ひだり乳癌
9 月20 日 当院 患者様が「ひだり乳房」の紹介状と病理報告書を持参して受診した。担当医の認識 ひだり乳癌
10 月6 日 当院 担当医は精査のため画像検査を行い、「みぎ乳房」にも陰影が見られたため、組織検査を患者様の利便性に配慮してA 病院で行うこととした。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌疑い
10 月13 日 A 病院 「みぎ乳房」の組織検査を行った。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌疑い
10 月20 日 A 病院 検査結果は「悪性所見なし」であった。病理報告書がA 病院の電子カルテに掲載されたが、担当医は事前に確認をしなかった。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌疑い
10 月27 日 A 病院 【みぎ乳房の組織検査結果説明】 担当医の手元には、「ひだり乳房の最終病理報告書」と「みぎ乳房の病理報告書」の2 枚が用意されていた。担当医はそのうち、よく確認をせず手に取った「ひだり乳房(悪性所見あり)」の最終病理報告書を「みぎ乳房」のものと思い込み、「みぎ乳房も乳癌であった」と説明した。当院への紹介状にも「両側とも乳癌である」と記載した。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌
11 月6 日 当院 患者様が受診した。担当医はこの際も紹介状に同封された病理報告書の左右を確認しなかった。また同封されていた「ひだり乳房」の病理標本を「みぎ乳房」のものと思い込んで当院病理部へ再診断を依頼した。病理部は「みぎ乳房」のものとして再診断を行った。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌
12 月12 日 当院 「悪性所見なし」の「みぎ乳房」を含む両側の乳房を切除した。担当医の認識 ひだり乳癌みぎ乳癌
12 月22 日 当院 手術摘出検体の病理検査で、誤認が判明した。 担当医の認識 ひだり乳癌みぎ悪性所見なし

当院では、本件の判明後、直ちに事例検討委員会(外部委員含む)を開催し、発生要因を検証するとともに、再発防止策の検討を行った。その内容を患者様とご家族に説明して謝罪するとともに、引き続き、当院で定期的に経過観察などを行うこととなった。

5. 主な要因
担当医が「ひだり乳房」の病理報告書を「みぎ乳房」のものと誤認したことが最大の要因である。
① 担当医が誤認をした要因として、以下の確認不足がある。
電子カルテに掲載された「みぎ乳房」の病理報告書を、結果説明の前に事前確認していなかった。
担当医が患者様に「みぎ乳房」の検査結果を説明する際、手元に用意されていた左右2つの病理報告書のうち、よく確認をせず手に取った「ひだり乳房(悪性所見あり)」の病理報告書を「みぎ乳房」のものと思い込んでしまった。
上記の説明時、病理報告書に記載されていた「みぎ」「ひだり」の記載を患者様と一緒に確認していなかった。

② 周囲が担当医の誤認に気づくことができなかった要因として、以下の点が挙げられる。
担当医が単独で診療を行ったため、周囲は誤認に気付けなかった。

6. 再発防止策
医師の誤認防止と誤認に気づく体制の整備を目指し、以下の再発防止策に取り組んでいる。

① 医師への教育の徹底
医師は検査結果を患者様に説明する際、病理報告書の姓名や部位などを必ず患者様と一緒に逐一確認する。

② 院内体制の整備
患者の診療が2 施設にまたがる場合は、同一の医師のみが診療を行わないよう、別の医師が初診を担当することや、紹介状に目を通すなどの配慮を行う。」

上記の件は私が担当したものではありません.
上記発表からは,10 月27 日に問題があるように思います.担当医の手元には「ひだり乳房の最終病理報告書」と「みぎ乳房の病理報告書」の2 枚が用意されていたにもかかわらず,担当医はよく確認をせず手に取った「ひだり乳房(悪性所見あり)」の最終病理報告書を「みぎ乳房」のものと思い込み,その思い込みが正されること無く手術が行われたのですから.
複数の人の眼でみることが大事で,患者に病理の報告書を渡し一緒に確認すれば避けられた事態と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2021-10-29 22:33 | 医療事故・医療裁判